日英原子力産業フォーラム 先進技術もテーマに
02 Nov 2023
開会挨拶に立つロングボトム英大使
英国ビジネス・通商省および駐日英国大使館の主催による「日英原子力産業フォーラム」が10月25日に駐日英国大使館で開催され、英国側は15の企業、日本側は電力、大手メーカー、ゼネコン、商社など、31の関係機関・企業から、合わせて約100名が参加し、両国関係者らによる活発な情報・意見交換が行われた。同フォーラムは、英国市場協議会、英国原子力産業協会(NIA)、日本原子力産業協会が後援。7回目となった今回、メインテーマとして、これまでの廃止措置・廃棄物管理に加え、小型モジュール炉(SMR)などの先進原子力技術も取り上げられた。
冒頭、歓迎挨拶に立ったジュリア・ロングボトム駐日英国大使は、G7広島サミット(5月19~21日)に際し行われた日英首脳ワーキング・ディナーにて発出の「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」に言及。広島アコードに盛り込まれたSMR、廃棄物管理、技術・多様性、核融合、原子力安全、広報など、原子力エネルギーの重要事項に関する協力姿勢をあらためて述べるとともに、高温ガス炉や福島第一原子力発電所の廃炉における技術的知見共有の可能性を一例に「既存の日英間パートナーシップをさらに深めていきたい」と強調した。
また、原産協会の新井史朗理事長は「世界のエネルギー価格が高騰する中、日本の原子力政策では脱炭素への取組や国際協力が進展した」と、NIAのトム・グレイトレックス理事長はビデオメッセージを通じ「英国でも原子力発電は非常に大きな岐路に立たされている。今回のフォーラムが両国の産業界にとって互いに発展する機会となって欲しい」と述べ、有意義な国際間の企業交流が図られるよう期待を表明した。
「新規建設と先進原子力技術」のセッションでは、日本ロールス・ロイス社社長の神永晋氏、コア・パワー社CEOのミカル・ポー氏、モルテックスフレックス社商業開発担当ディレクターのトリス・デントン氏、英国原子力公社(UKAEA)RACE[1]Remote Applications in Challenging Environments:遠隔操作・ロボット技術センター・JET[2]Joint European Torus:EUの核融合実験装置廃止措置担当ディレクター兼責任者のロブ・バッキンガム氏らが登壇。
神永氏は、欧州諸国でロールス・ロイス社が開発を進めているSMRについて、低コスト・低炭素で水素製造も可能な他、「再生可能エネルギーとバランスよく既存のインフラ設備に接続できる」メリットを強調。4月の原産年次大会にも登壇したポー氏は、「原子力と海事の融合」と標榜し、船舶の動力源としてクリーンな燃料供給にも貢献する浮体式原子力発電の展望を披露。1兆ドル規模にも及ぶビジネスチャンスを見込み、同氏は、遠隔地・離島へのエネルギー供給の可能性や、「世界の海運業で排出される11億トンのCO2削減に挑む」との意気込みを示し、日本のメーカー・造船業の積極的な参画を期待した。デントン氏、バッキンガム氏は、それぞれ溶融塩炉、核融合における要素技術開発や人材育成の取組について発表。将来の社会実装に向けて、燃料、ポンプ機器、材料開発、コンピューター、ロボティクスなどの諸分野において、サプライチェーンを確保し国際間のパートナーシップを図っていくことの重要性を強調した。
フォーラムでは、日英原子力関連企業の連携を促進するため、英国企業によるパネル展示のほか、今回、初となる日英企業による個別面談の機会も設けられた。