原子力産業新聞

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復興推進委 教育を通じた福島再生が議論に

22 Nov 2023

挨拶に立つ高木復興庁副大臣

政府の復興推進委員会(委員長=今村文彦・東北大学災害科学国際研究所教授)の第43回会合が11月22日に開催され、東日本大震災被災各県(岩手、宮城、福島)の復興状況に関する報告を受けて、復興・再生に向け意見が交わされた。〈配布資料は こちら

冒頭、挨拶に立った復興庁の高木宏壽副大臣は、最近の被災地視察経験から、「復興の状況を一言で言えば、実に複雑多様」と強調。特に、福島県については、避難指示解除の段階による復興状況の差異に言及し、「原子力災害からの復興は今、ようやく緒に就いたばかり」と述べ、引き続き国が前面に立って支援していく姿勢を示した。

福島県内の避難指示については、政府・原子力災害対策本部が21日、富岡町に設定された帰還困難区域を11月30日に一部解除することを決定。これで、6町村に設定された特定復興再生拠点区域[1]帰還困難区域のうち、避難指示を先行して解除し居住を可能とすることにより、復興・再生の推進を図るエリアのすべてが解除されることとなる。

リモートで出席した内堀雅雄委員(福島県知事)は、あらためて「帰還困難区域すべてを避難指示解除し、復興・再生に最後まで責任をもって取り組む必要がある」と強調。同氏は、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出に関し、一部の国における輸入規制強化などの影響を懸念し、「幅広い業種に対する万全な風評対策に政府一丸となって最後まで全責任を全うして欲しい」と国に対し要望。さらに、発災から12年8か月を経て「今後は風化との闘いとなる」とも述べ、マスメディアを巻き込んだ積極的な情報発信、若手に対する災害教育の重要性を強調した。

現地調査報告を行う戸塚委員「福島復興の姿を世界に発信すべき」と

今回の委員会会合では、教育が一つの論点となった。福島県の大熊町、双葉町、浪江町を10月25日に現地調査で訪れた戸塚絵梨子委員(パソナ東北創生社長)が、その調査結果を報告し、今春、大熊町に開校した幼保小中一体化施設「学び舎 ゆめの森」の校長の話を紹介。それによると、特徴的な校舎や少人数を活かした特色ある教育が注目され「同校に入るための町内転入者も増えている。子供たちは地域のコミュニティを担う大きな存在だ」という。また、浪江町の震災遺構「請戸小学校」では、町担当者より、発災時の適切な避難により教職員・生徒全員の命が守られた経験、防災教育・訓練の重要性が説明されたことを強調。戸塚委員は、この他、「創造的復興の中核拠点」を目指し浪江町内に設立された福島国際研究教育機構(F-REI)など、計7か所の施設・区域を訪れた感想として、「『これから始まっていく』というエネルギーを感じた。世界に注目され飛躍していく場所となる」などと述べ、福島県が東北全体の復興の牽引役となることを期待した。

これに対し、「子育て世代」と称する小林味愛委員(株式会社 陽と人 代表)は、教育の充実化に加え、小児医療の課題などを指摘。高等教育に携わる山﨑登委員(国士舘大学防災・救急救助総合研究所教授)は、「発災から10年以上が経過し、学生が学ぶにも断片的な情報だけで、全体を俯瞰し理解するのが難しくなっている。被災地から離れるほど、小中学生は当時のことを既に知らない」と述べ、過去の取組を再整理し、継続的な防災教育・人材育成が図られるよう求めた。

今村委員長は、「学び舎 ゆめの森」について、今後の運営に向け予算面が課題となっていることを指摘した。内堀委員は、今回、復興・再生のさらなる推進に向けて、財源確保の必要性を強調している。今後の会合では、「第2期復興・創生期間」(2021~25年度)における財源の枠組みが論点となりそうだ。

※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。

脚注

脚注
1 帰還困難区域のうち、避難指示を先行して解除し居住を可能とすることにより、復興・再生の推進を図るエリア

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