原子力産業新聞

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原産協会 産業動向調査2023を刊行

27 Nov 2023

日本原子力産業協会は11月24日、「原子力発電に係る産業動向調査2023報告書」を刊行した。同協会が原子力発電に係る産業の全体像を把握し、事業活動に活かすことを目的に、1959年以来、毎年実施しているもの。今回の報告書は、国内で10基の原子力発電プラントが再稼働していた2022年度を対象とする調査の結果で、電気事業者、重電機器メーカー、商社、サービス業など、245社からの回答を取りまとめた。

それによると、電気事業者の原子力関係支出高は、1兆8,392億円で、前年度比4%増加。鉱工業他における原子力関係支出高は、1兆9,104億円で、同6%増加した。電気事業者の支出高、鉱工業他の売上高ともに、近年、横ばいの状態が続いている。

電気事業者の原子力関係支出高の内訳を費目別にみると、前年度との差が大きいものとしては、「機器・設備費」が558億円減少、「土地・建物・構築物」が540億円の増加、「運転維持・保守・修繕費」が503億円の増加。新規制基準対応支出額は3,322億円で全体の約18%を占めており、2019年度以降、減少傾向にある。

鉱工業他の原子力関係売上高を納入先別にみると、「電気事業者向け」が前年度比2%減の1兆2,428億円となった一方、「鉱工業等向け」が33%増の5,650億円となった。さらに、産業構造区分別にみると、「プラント既設」が5%増の1兆324億円、「バックエンド」が11%増の5,757億円となった。

また、定性調査では、現在(調査実施期間の2023年6、7月)の景況感を「悪い」とする回答が、近年、徐々に減少していたが、今回の調査では大幅に減少し48%となり、「悪い」と「普通」が拮抗。1年後の景況感については、前回調査で5年ぶりに「良くなる」が「悪くなる」を上回ったが、今回は、さらに「良くなる」が対前年度比8ポイント増の23%となり、「悪くなる」の7%を大きく上回った。

一方で、原子力発電所の長期停止が売上のみならず「技術力の維持・継承」に大きな影響を与えており、8割以上がOJT機会の減少、3割以上が雇用の確保、2割以上がモノや役務の入手に具体的な影響が出ていると回答。他社の撤退によって影響を受けている、または受ける恐れがある分野としては(複数回答可)、4割以上が「技術者・作業者」、2割以上が「素材・鋼材」と回答。人材に関しては、採用や配置について65%が「現状維持」と回答した一方で、21%が「拡大する」意向を示した。

国内の新型炉・革新炉については、76%が関心を示し、そのうち、6割近くが「プロジェクトへの参加や機器・部品の供給を行いたい」といった意欲を表明。海外の新型炉・革新炉についても、56%が関心を示しており、そのうち、5割近くが積極的な参画に意欲を表した。

原子力発電に係る産業の課題としては、8割以上が「政府による一貫した原子力政策の推進」を望んでおり、「早期再稼働と稼働したプラントの安定運転によって国民の信頼を回復することが必要」と考えている割合も多いことが示された。

原産協会の新井史朗理事長は、同日の記者会見で、景況感の改善に関し、「世界的なエネルギー価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー安全保障の重要性が高まる中、国内においては、『GX脱炭素電源法』[1]脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律が成立し、原子力を積極的に活用していく方針が明示されたことが背景にあると推測している」と述べた。

脚注

脚注
1 脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律

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