原子力産業新聞

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青森県・エネ庁 原子力施設共生の将来像を検討する会議が始動

29 Nov 2023

青森県に立地する原子力施設(むつ市他発表資料より引用)

「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」(資源エネルギー庁)の初会合が11月28日、青森市内で開かれた。〈配布資料は こちら

今夏、青森県の宮下宗一郎知事が核燃料サイクル政策について県と関係閣僚らが意見交換を行う「核燃料サイクル協議会」で政府に早期設置を要請していたもの。県内には、建設中も含め、東北電力および東京電力の東通原子力発電所(東通村)、電源開発大間原子力発電所(大間町)、日本原燃六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)、リサイクル燃料貯蔵使用済燃料中間貯蔵施設(むつ市)が立地。同会議は、国・立地自治体、事業者らが一体となり地域と原子力施設が共生していく将来像についてともに考え、築き上げていく場として、資源エネルギー庁が立ち上げた。今後、実務レベルのワーキンググループを設置し、来夏を目途にその取組の工程表が策定される運び。立地地域と原子力施設の共創会議については、2021年に福井県を対象に立ち上げられており、昨夏、将来像の実現に向けた基本方針を取りまとめている。

青森県の共創会議は、立地自治体として、青森県、むつ市、六ヶ所村、大間町、東通村の各首長、事業者として、日本原燃、東北電力、東京電力、電源開発、リサイクル燃料貯蔵、電気事業連合会の各代表者の他、県の商工団体代表者、有識者らがメンバー。

議論に先立ち、資源エネルギー庁が、立地4市町村の産業構造について整理。2045年に向け「生産年齢人口が大きく減少し、経済の担い手が減少」との問題意識を示した上で、むつ市は商業施設が多く卸売業・小売業が、六ヶ所村は原子力施設関連の製造業が、大間町と東通村は建設業や漁業が、それぞれ主要産業となっているなどと、各市町村の特徴を分析。

宮下知事は、むつ市長在任時代にリードしていた立地市町村懇談会における検討の経緯も振り返り、「未だに立地地域に光が当たっていない」と憂慮し、「地域がまとまり国と連携し県全体が自立的に発展していく仕組みづくり」が図られるよう、共創会議での有意義な議論を期待した。

立地市町村を代表し、むつ市の山本知也市長は、「運転期間延長や廃炉が進む福井県とは異なり、事業との共生、リスクとの共生が実質的にこれから始まる地域」とした上で、4市町村の共通課題として、防災安全対策と地域振興策の充実・強化を提示。六ヶ所村の戸田衛村長は、むつ小川原開発から続く産業振興策の歴史を振り返り、「先人たちがどのような思いで原子燃料サイクル施設を了承したのか。現在の六ヶ所村は、当時先人たちが描いていた未来への『道半ば』」とあらためて問題提起。大間町の野﨑尚文町長、東通村の畑中稔朗村長は、いずれも将来の町村人口の減少を懸念し、それぞれ、「建設の早期再開・本格稼働は重要」と、原子力開発の地域振興における役割を、600年の歴史を有する「下北の能舞」他、地元文化財を通じた観光振興の可能性などを強調した。

これを受け、事業者として、日本原燃の増田尚宏社長は、六ヶ所再処理工場の「2024年度上期のできるだけ早期」のしゅん工を目指しオールジャパン体制で審査・工事に取り組んでいるとした上で、「地域とともに発展していくための取組」として、地元企業の活用、人材育成、地域産業の活性化をあげ、「当社事業は地域の皆様の信頼と支えなくして成り立たない」と強調した。

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