原子力学会 「持続的な原子力利用シナリオ」に向け中間報告
05 Dec 2023
日本原子力学会の「持続的な原子炉・核燃料サイクル検討・提言分科会」(主査=斉藤拓巳・東京大学大学院工学系研究科教授)は11月28日、中間報告書を発表した。同分科会では昨夏より、「エネルギー・経済安全保障とカーボンニュートラルを両立する社会の実現」に貢献する原子炉システムと核燃料サイクルのあり方について検討を開始。同報告書では、日本の原子力利用シナリオに関する政策提言に向け中間整理を行った。
そこでは、「100年程度を目安に、時間フェーズに応じた技術の進化が見通せ、かつ数百年程度に及ぶ資源確保と環境影響の展望が描けるシナリオが必要」と述べ、
- 短期的な観点から、既設軽水炉の再稼働と最大限活用
- 中期的な観点から、安全性を向上させた革新軽水炉の新増設あるいはリプレース、高経年化した軽水炉の廃止措置プロセスの円滑な推進
- 長期的な持続性の観点から、核燃料サイクルを閉じて、エネルギー資源の確保と放射性廃棄物の負担軽減を同時解決していく高速炉サイクルの実用化
――の実現に向けた取組を、着実に継続・推進していく必要があると強調。
「持続的な原子力利用シナリオ」の要件として、日本のエネルギー需給構造の特徴を踏まえ、
- エネルギーミックスとの整合性
- 自律的なエネルギー需給構造
- 核燃料サイクルと革新炉(高速炉)との整合性
- プルトニウム利用方針
- 円滑な廃止措置
- 最終処分との整合性
- 人材育成とサプライチェーン
――に適合することが必要と述べている。
その中で、将来の高速炉の実用化に向け、サプライチェーンに関して、「プラント設計および機器製造の技術を持つメーカーを中核にして、サプライチェーンを構成する計装・機器メーカー、素材メーカー等の技術力が不可欠」と指摘。サプライチェーン再構築の必要性とともに、「もんじゅ」に係った技術者のリタイアや技術知見散逸の懸念から、「実証炉および関連する燃料サイクル施設の建設を急ぐ必要がある」と述べている。また、人材育成に関しては、「原子力分野を志す学生数を増やすことは、持続的な原子力利用を下支えする重要な点」と強調。社会の持続的な発展の中で「原子力エネルギーのステータスの再確立が求められる」とも指摘し、その実現に向け、予見性ある原子力政策や国民各層との丁寧なコミュニケーションが必要と述べている。