原子力産業新聞

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総合エネ調革新炉WGが1年ぶりに開催

12 Dec 2023

総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所所長)が12月11日、およそ1年ぶりに会合を開催し、高速炉・高温ガス炉の実証炉、サプライチェーン・人材を中心とした次世代革新炉の今後の検討課題について整理、議論した。〈配布資料は こちら

今会合では初めに、資源エネルギー庁が2023年2月の「GX実現に向けた基本方針」閣議決定以降の次世代革新炉の動向について、海外の動向も紹介しつつ、整理。同方針では、革新軽水炉、小型軽水炉、高速炉、高温ガス炉、核融合炉について、2050年頃までを見据えた「目標・戦略」、「GX投資」、「規制・制度」、「国際戦略」に係る各行程が示され、「安全性の確保を大前提として、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む」とされている。

また、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発に向けては、「GX経済移行債」による投資促進策として、今後3か年で高速炉に460億円、高温ガス炉に431億円を措置し、研究開発を加速していくこととなったほか、いずれも今夏には中核企業として三菱重工業が選定されている。こうした状況変化をふまえ、高速炉・高温ガス炉を中心とした次世代革新炉の技術ロードマップのさらなる具現化に向け、本WGは再開された。

今回、資源エネルギー庁は、高速炉、高温ガス炉の実証炉開発における技術的検討に向け、

  • 設計段階による実証炉の仕様決定
  • 規格・基準の整備
  • 燃料製造施設のあり方
  • その他、各炉型に係る要素技術開発

――といった論点を提示。また、国内サプライチェーンの維持・強化、人材に係る課題をあらためて示した。

委員からは、国内サプライチェーンの現状について、田村多恵委員(みずほ銀行産業調査部次長)が、ウクライナ侵攻以降のエネルギー自給率の重要性を鑑み、非化石電源である原子力の重要性をふまえ、「GX経済移行債を活用しながら、原子力技術の維持・強化に資する取組への支援を行う」ことを評価。人材育成に関しては、高木直行委員(東京都市大学原子力安全工学科教授)が、「意欲的な学生は増えているが、まだまだ魅力的な分野というには程遠い」と述べ、次世代層への啓発の必要性を強調した。また、小伊藤優子委員(日本原子力研究開発機構高速炉・新型炉研究開発部門)からは、サプライチェーンや人材の課題だけでなく、国民理解の観点から、「革新炉による経済や他産業への波及効果に関する議論も併せて行っていくべき」との意見も出された。

一方、遠藤典子委員(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授)は、「新増設に関する政策的な議論の深化が見られない」ことに言及、革新軽水炉開発に向けた政策推進が急務との認識を示したほか、永井雄宇委員(電力中央研究所社会経済研究所主任研究員)は、「次世代革新炉への投資活性化には、現在検討中の長期脱炭素電源オークションや非化石電源比率義務では不十分」としたうえで、費用回収リスクが発電事業者に偏らない仕組みの整備の必要性を主張した。

また、産業界の立場から参加している大野薫専門委員(日本原子力産業協会)は、今後の次世代革新炉の展開の時間軸をふまえ、審査基準策定における規制当局間の国際連携、協力の必要性を提起した。

今後、これら意見をふまえ、技術ロードマップの具体化や次世代革新炉の建設に向けた課題について検討していく。

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