日立「産業拡張メタバース」を原子力にも適用へ
20 Dec 2023
メタバース空間上に再現された原子力発電所内の構造物の実寸大模型
日立製作所は12月18日、現場作業を迅速に進めるための技術を組み合わせ、産業分野での活用を想定した「産業拡張メタバース」を発表した。〈日立発表資料は こちら〉
同社では、これまで、エネルギーや交通分野の建設・製造・保全などの現場で、施工・製造他、現場関係者と設計・品質保証・管理部門との情報共有や合意形成を通じ、メタバース(仮想空間)技術の開発に取り組んできた。
このほど、同技術を、日立GEニュークリア・エナジーおよび日立プラントコンストラクションとも連携し、両社内で実施した原子力発電所の実寸大模型の移設工事に適用。その結果、特殊なデジタル技術を使わず、遠隔の部署同士での認識食い違いによる手戻り頻度を減少し、他の作業の完了待ちを低減するといった業務効率の向上に有効であることを確認した。
今回、開発された技術は、「従来は物理的な制約によって、その場にいる作業員にしか把握できなかった現場を、仮想空間に拡張し、遠隔地にいる関係者にも直感的な形で現場に見える化する」というもの。
主な特徴としては、
- 現場のデータを5W1Hの情報とともに迅速に収集する技術
- 蓄積データ活用のためのAI技術
- ウェブブラウザベースの簡便かつ軽量なデータ可視化
――をあげている。
熟練者からの技術継承が課題となる中、日立GEニュークリア・エナジーおよび日立プラントコンストラクションでは、「三現主義」(「現場」で「現物」を見て「現実」を認識することを重視する考え)を拡張する技術として、原子力発電所における各種作業に同技術を活用していくとしている。
日立、日立GEニュークリア・エナジー、日立プラントコンストラクションでは、三社合同で2023年7月から8月の約2か月間にわたり、原子力発電所のモックアップの移設工事で同技術を実際に使用している。