東工大 核セキュリティに資する原子炉監視手法を開発
16 Jan 2024
ニュートリノによる原子炉運転監視のイメージ
東京工業大学のゼロカーボンエネルギー研究所(加藤之貴所長)は1月12日、原子炉内の核分裂生成物から放出される反電子ニュートリノ(電気的に中性な素粒子の一種)を利用し、原子炉内部の様子をリアルタイム、非破壊、遠隔で監視できる新たなモニタリング手法を発表した。
同研究所は、気候変動問題への関心の高まりから、原子力エネルギーを「貴重なゼロカーボンエネルギー」ととらえ、2021年6月に開設されて以来、安全かつ経済的な原子力エネルギーシステムの開発に取り組んできた。今回の研究成果は、原子力の安全性に加え、核セキュリティの向上にも貢献するもの。
原子炉内で核燃料物質が中性子を吸収し核分裂する際、エネルギーとともに、およそ1,000種類に及ぶ核分裂生成物が放出される。それらの物理的な性質の違いをもとに、核分裂を起こした核種の種類を同定することが可能となる。それにより、核分裂生成物が放出する反電子ニュートリノの観測で得られたデータ計算から、原子炉の運転状態(稼働の有無)の他、原子炉内のウランとプルトニウムの組成比を検知することを可能とした。つまり、「原子炉が申告通りに運転・燃料交換を行っているか」といった核査察の技術向上に貢献することが期待される。実際、関西電力美浜3号機の運転条件を模したシミュレーションを行い、運転中の原子炉内の燃料組成をリアルタイムかつ遠隔測定により監視可能なことが確認されている。
研究チームでは、「今後、増加していくことが予想される原子力利用において、未申告の核物質移動や核兵器製造への転用を防ぐことができる」と、期待を寄せており、引き続き本手法のさらなる精緻化に取り組んでいくとしている。