原子力産業新聞

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QST 核融合向けトリチウム除去技術を開発

17 Jan 2024

石川公一

トリチウム(三重水素)除去性能試験に用いられた装置

量子科学技術研究開発機構(QST)は1月16日、国際熱核融合実験炉(ITER)の推進に向け、核融合エネルギーにおいて機器類から排出されるガス中のトリチウム除去のための新たな設備を開発し、その性能試験を完了したと発表した。〈QST発表資料は こちら

核融合エネルギーでは、トリチウムを高純度に濃縮して燃料として用いるが、放射能を持つため、施設外への排気が環境・一般公衆に影響を及ぼさないよう除去する必要がある。ITER計画では、これまで、トリチウムを扱う機器類から排出されるガス中のトリチウムを酸化させ、水蒸気の形で乾燥塔により取り除く方法に着手していたが、その後の建設活動で、乾燥塔の連続使用では、頻繁なバルブ切替え作業に伴う機器類の故障リスクが高くなることが判明。そのため、こうしたリスクに対応すべく、QSTでは、工場や汚水処理施設から発生する排出ガスの煤塵や悪臭除去などにも用いられる「スクラバー塔」を利用した新たなシステムの開発に取り組んできた。

「スクラバー塔」によるトリチウム除去は、特殊な充填物が詰まった塔に、純水をシャワー散布しトリチウムを含む水蒸気を連続的に洗い流すシンプルな構造とすることで、作業を簡略化し故障のリスクを低減。従来の乾燥塔方式に比べ、排水量が増えるというデメリットがあったが、充填物の化学的特性を改良することで解決した。QSTでは、旧日本原子力研究開発機構が核融合開発を担っていた頃を含め、およそ11年にわたって、「スクラバー塔」を用いたトリチウム除去の信頼性実証に取り組んでおり、今回、10年に及ぶ運転においても、性能低下がないことを確認。ITER計画の推進に有効なトリチウム除去設備として、長期的な健全性を維持できることを実証した。

今回の技術開発に当たったQST研究チームでは、「ITERの安全性を向上させるとともに、日本の原型炉開発にも大きく貢献するもの」と、期待を寄せている。

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