原子力産業新聞

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原子力学会 バックエンド対策で提言

01 Feb 2024

石川公一

核燃料サイクルの要となる六ヶ所再処理工場

日本原子力学会は1月30日、「核燃料サイクルの成立性」研究専門委員会による提言を発表した。同委員会が原子力発電利用における使用済燃料について、「大きな問題を抱えていることは自明であり、避けては通れない点」との認識に立ち、2017~21年にわたって検討を行った成果を取りまとめたもの。

計5項目の提言は、各々1ページ程度で概要が説明できるよう「一件一葉」を基本としているのが特徴。また、日本における現行の「核燃料サイクル」政策にとらわれない議論、「多くのオプションが存在する」ことを前提として、「燃料サイクル」と表記している。実際、同委員会での検討は、原子力に関わる各専門分野からの参画を得て、再処理の有無による「軽水炉ワンススルー」、「プルサーマル導入」や、「高速炉導入」など、シナリオを設定し評価。さらに、2100年までを見据えた不確実性にも鑑み、原子力発電設備容量に係る「上振れ」、「現状」、「下振れ」も想定し、「核燃料サイクルの成立性」に関して定量的に精査した。例えば、「上振れ」のシナリオでは、2050年以降で6,600万kWの原子力発電設備容量が維持されるケースを想定し、2100年時点の使用済燃料貯蔵量について、「再処理を行うことで、ワンススルーに比べ10~20%に低減できる」との試算を示している。

これまでの検討結果を踏まえ、今回の提言では、

  1. 原子力の役割に応じた新たな燃料サイクルおよび、その政策決定の仕組みを構築する
  2. 政府は、その政策決定の根拠となる評価基準を明確にし、常に改良ないしは新しい技術の導入が可能な仕組みを構築する
  3. 原子力に携わる産官学は、政策に基づき、開発から実用化に至るまで、資源(施設、人材)を長期的に整備する
  4. 人材育成および技術革新のために、基礎基盤の研究開発能力を維持・成長させる

――必要性を指摘。

さらに、「原子力発電に対する日本社会の信頼が低下している」ことを懸念した上で、

 5.これらの必要性は、2050年付近で「原子力発電が必要とされている場合、そうでない場合」いずれにも存在する

――と述べている。

同委員会では、日本原子力研究開発機構の専門家を招き、高レベル放射性廃棄物の減容化につながる加速器駆動システム(ADS)など、新たな技術オプションの可能性も検討してきた。提言を通じ、仮に将来、日本が「脱原子力」を選択した場合でも、処分場立地などのバックエンド対策は不可避なことをあらためて強調。アカデミアの立場として、引き続き、合理的な政策決定、産官学による研究開発体制の整備、インフラ・人材の再配置など、社会ニーズに適切に対応していく必要性を述べている。

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