原子力産業新聞

国内NEWS

地層処分文献調査 NUMOが適地公表

15 Feb 2024

石川公一

寿都町の概要調査候補地

総合資源エネルギー調査会の地層処分技術ワーキングループ(委員長=德永朋祥・東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)の会合が2月13日に行われ、原子力発電環境整備機構(NUMO)が、北海道の寿都町・神恵内村における高レベル放射性廃棄物の処分地選定に向けた文献調査の報告書案について説明。両町村ともに、文献調査に続く概要調査の候補地となることが示された。〈配布資料は こちら

文献調査は、最終処分法で定められる処分地選定に向けた3段階の調査(文献調査:2年程度、概要調査:4年程度、精密調査:14年程度)の最初のプロセスとして行うもので、地質図や鉱物資源図など、地域固有の文献・データをもとにした机上での調査となる。次段階の概要調査に進む場合には、北海道知事および両町村長の同意が必要だ。

NUMOは、2020年10月に寿都町・神恵内村からの応募を受け、同年11月に文献調査を開始。2021年4月以降は、住民との「対話の場」を設け情報提供に努めてきた。一方で、両町村以外に文献調査を受入れる自治体が現れないことから、政府は2023年4月に最終処分基本方針の改定を閣議決定し、候補地を募るべく国の関与を強化している。

今回のWG会合では、冒頭、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の久米孝氏が挨拶に立ち、両町村による地層処分事業への理解、文献調査の受入れに対し、あらためて謝意を表明。その上で、「全国初の調査であり、今後、別の地域で調査が行われる際の参考事例ともなりうる」として、今後のプロセスを丁寧に進めていく考えを述べた。

両町村における文献調査の報告書案については、NUMO技術部長の兵藤英明氏が、同WGの上層となる特定放射性廃棄物小委員会が昨秋取りまとめた「文献調査段階の評価の考え方」に基づく評価および検討プロセスの全体像を説明。技術的観点から、地震・活断層・火山などの地質特性、鉱物・地熱資源の存否や、経済社会的観点からの各評価結果、概要調査を実施する場合の論点を整理。神恵内村に隣接する積丹町には、第四紀火山の積丹岳(約250~240万年前に活動)が存在し、その山頂15km圏内(境界は明確ではないが、処分地選定の適性を色分けした科学的特性マップで「好ましくない範囲」とされる)に村の陸域大部分が入ることから、「火道・火口等に関する情報を拡充し、活動中心を再度検討する必要がある」としている。これらの技術的検討結果を踏まえ、寿都町は町全域を、神恵内村は南端部(陸域3~4平方km)を概要調査地区の候補としてあげた。

報告書案に対し、同WGでは、成案取りまとめに向けて、今後、数回にわたり会合を行い、技術的立場から引き続き検討を行っていく。

なお、北海道の鈴木直道知事は、今回の文献調査報告案公表に関し、概要調査への移行には「反対の意見を述べる」との意向を表明した上で、「説明会を通じて、こうした北海道の状況を広く全国に知ってもらい、最終処分事業の理解促進が進むことを期待している」とのコメントを発表した。

cooperation