QST「I-Beetle」コンパクトな甲状腺モニタリングを実現
16 Feb 2024
量子科学技術研究開発機構(QST)は2月14日、乳幼児を含む幅広い年齢層に適用可能なポータブルタイプの甲状腺スペクトロメータ「I-Beetle」の製品化を発表した。原子力災害発生時の放射線防護措置として、公衆の甲状腺被ばく線量モニタリングの測定精度・実効性向上のため、放射線測定機器で実績のあるクリアパルス社と共同で開発したもので、既に1月から千代田テクノルより販売が開始されている。〈QST発表資料は こちら〉
甲状腺被ばく線量モニタリングは、放射性ヨウ素が甲状腺に集積することで、内部被ばくが懸念される場合に実施され、その健康影響は、特に、若年層で高くなることが知られている。これに対応すべく、原子力規制委員会では、原子力防災対策指針に基づき、緊急防護措置となる安定ヨウ素剤の服用に係るガイドラインを策定し、随時の見直しや対応訓練を行い、立地自治体でも事前の配布や住民への説明を実施しているが、優先すべき対象者の選別や副作用など、課題も多い。
まずは、発災元の施設周辺住民の甲状腺被ばく線量を早急に把握することを念頭に、QST放射線医学研究所では、2017年度よりポータブル甲状腺スペクトロメータの試作機開発に着手し試作機を製作。2020年度からは、その実用性検証とともに、可搬性や被検者の不安解消も図るべく、小型軽量化に取り組んできた、
これらの成果を基礎に、QSTは2022~23年度、社会実装を目指し、クリアパルス社との共同プロジェクトとして、さらに改良を進めた上で、製品版の販売保守に関わる契約を千代田テクノルと締結。2024年1月に同社より「I-Beetle」の販売が開始された。「I-Beetle」は、乳幼児を含む広範な年齢の被検者に対し測定時の体動による影響を受けにくく、高感度かつ高精度の甲状腺被ばく線量モニタリングが実現できるほか、測定時間の短縮、ファントム(マネキンの一種)を用いることで年齢や体格による補正なども可能だ。
今回、QSTとともに「I-Beetle」の共同開発に当たったクリアパルス社は、東京都内でも荒川区と並び中小メーカー、いわゆる「町工場」の集積する大田区に拠点を置き、これまでも放射線測定機器類で多くの製造・販売実績を有し、近年ではドローン開発にも参入している。