総合エネ調原子力小委 事業環境整備などを議論
21 Feb 2024
「長期脱炭素電源オークション」のイメージ、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が事務を担う
総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=山口彰・原子力安全研究協会理事)が2月20日に開かれ、デロイトトーマツ合同会社よりヒアリングを受け、原子力事業の資金面での課題などについて議論した。〈配布資料は こちら〉
はじめに、資源エネルギー庁が直近の原子力動向を報告。東北電力女川2号機の再稼働予定が安全対策工事完了時期の見直しにより2024年9月となることを紹介した。また、元旦に発生した能登半島地震に関しては、北陸電力志賀原子力発電所の安全機能に異常はなく、「今回の地震を通じて得られた教訓等を踏まえながら、原子力防災体制の充実・強化を図っていく」とした。同調査会電力・ガス基本政策小委員会において進められている電力システム改革の検証については、1月に「長期脱炭素電源オークション」の初回応札が開始されたところだが、バックエンド事業の遅延など、原子力発電固有のリスクに係わる指摘事項を整理し、議論に先鞭をつけた。
デロイトトーマツは、「長期脱炭素電源オークション」で、既設原子力発電所の安全対策投資が次回応札より対象となる見込みを踏まえ、投資回収・ファイナンスにおける課題を提起。当該制度について「容量市場と比較して、大幅に予見可能性の向上に寄与するもの」と評価する一方で、運転終了後の廃炉期間に生じる費用に関して、「事前に総額を見積もることができず、運転期間中の回収が困難となるおそれがある」などと、原子力発電固有の不確実性を懸念。官民の役割分担や民間資金活用の可能性他、ファイナンス面の課題にも言及した上、次期エネルギー基本計画において、長期的な原子力産業の戦略について明確化する必要性などを指摘した。
これに対し、委員からは、「長期的な安全性、安定供給、経済効率性、環境適用に関連するリスクを抽出して、海外の取組も参考にしつつ、今後改善策を検討していく必要があると思う」とする意見、事故に備えた財務基盤の検討など、原子力に特化したリスクに係わる指摘もあり、今後さらに議論を深めていく必要性が示唆された。
専門委員として出席した日本原子力産業協会の新井史朗理事長は、「事業者が投資意欲を持てるような、事業者に適切なファイナンスがつくような、事業環境整備が必要だ」と指摘した。〈発言内容は こちら〉
なお、今回の会合をもって退任することとなった山口委員長は、閉会に際し、主に安全性向上の議論をリードしてきた経験を振り返りながら、「まだ道半ばと思う。これまでの議論をしっかり活かしてもらいたい」と、挨拶を述べた。