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筑波大 BNCTで難治性脳腫瘍の治験開始へ

27 Feb 2024

石川公一

BNCTの説明を行う筑波大医学系・熊田准教授

筑波大学はこのほど、治療法が確立できていない難治性の悪性脳腫瘍である膠芽腫を対象に、加速器による「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)を適用した治験を開始すると発表した。〈筑波大発表資料は こちら

膠芽腫は、脳腫瘍の中でも最も悪性とされており、頭痛やめまいなどの主訴を示さない乳幼児にも発生するほか、働き盛りの世代ではストレスに起因する自律神経失調症とも症状が混同され、診断が難しく進行が極めて速いことで知られている。また、浸潤性(正常組織との境界が不明瞭で手術で患部を完全に切除できない)や、術後の社会復帰に対する懸念もあり、治療が困難な悪性新生物(がん)の一つだ。

BNCTは、放射線治療の一種で、「がんを細胞レベルでピンポイントに破壊する」もの。がん細胞だけに集積する性質のホウ素薬剤を投与、患部にエネルギーを調整した中性子を照射し、中性子とホウ素が核反応し発生したアルファ線とリチウムががん細胞を破壊するというメカニズムだ。粒子線治療でも治療が困難な、正常組織に浸み込んだがんに対する新たな治療法として注目されている。これまで、原子炉を利用した実証もなされてきたが、加速器を利用した中性子システムも京都大学と住友重機械工業の共同により開発が進められている。

筑波大学はこれまでも陽子線治療で実績をあげており、新たな治療システムについても、近隣に立地する高エネルギー加速器研究機構との協働で要素技術実証と臨床試験の相乗効果も図れる。同学が2月26日に発表したところによると、今回の加速器によるBNCT治験は初発膠芽腫の患者を対象とした世界初のもの。これまで5年生存率が10%程度と極めて低く、手術と放射線・化学療法を組み合わせても多くが再発し治療が困難であったが、すべてを取りきれない難しい部位に悪性腫瘍がある患者を対象にBNCTの安全性・忍容性を検証することで、高い有効性が期待される、としている。

今回の治験開始に際し、プロジェクトリーダーの同学陽子線治療センター部長の櫻井英幸氏は、「決して治すのが容易ではないような、難治性がんへの挑戦だ」と、BNCT治療法への期待を述べた。

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