2050年にかけ通信関係で電力需要急増 OCCTO検討会
07 Mar 2024
電中研が示したデータセンターの電力需要増に係る分析結果
電力広域的運営推進機関(OCCTO)に設置された有識者検討会では、2040・2050年を時間軸とした電力需給シナリオについて、昨秋より、多様性、客観性、事後検証性、発展性をポイントに、専門的知見を有する「技術検討会社」として、電力中央研究所、地球環境産業技術研究機構(RITE)、デロイトトーマツコンサルティング合同会社の3社からヒアリングを行い、2024年度末までの取りまとめを目指し検討を進めている。同検討会は3月5日、4回目の会合を開催した。〈配布資料は こちら〉
今回会合では、産業構造変化に伴う電力需要見通しについて、事務局が1~2月に実施した作業会で業界団体から寄せられた意見を踏まえ、データセンター、半導体、自動車産業、鉄鋼産業、化学産業、自家発関連、熱需要の各要素に係る電力需要の分析結果を整理。その中で、通信ネットワークを支える重要なインフラ設備となるデータセンターに関しては、大手通信会社3社の2022年における電力需要が86億kWh程度(日本の電力需要全体の1%弱)にも上っている現状が示された。特に、リモートワーク・ワーケーションが急速に普及し始めた2020年以降、高速通信を可能とする「5G設備」の本格的な設置準備が供用空白エリアを埋めるべく進んだこともあり、昨今、データセンターに係る電力需要の増加傾向が顕著となっている。さらに、「データ量は指数関数的に増加しており、2017~22年で年間平均成長率は30%」、「情報処理システムに係る需要設備であることから、常時、電力使用の変動が小幅で一定。そのため増加する電力需要に対応し、供給力のベースアップが必要」などと指摘した。
これを受け、電中研社会経済研究所の間瀬貴之氏らが、産業構造変化を踏まえた2050年度までの電力需要想定について発表。データセンターにおける電力需要増については、決定要因となるパラメーターとして、「床面積」と「平均電力密度」(電力需要/床面積)に着目し、2030年代前半までの増加分について、電力需要増に関する昨秋の電気新聞報道(500億kWh)、OCCTO供給計画(300億kWh)、技術革新・省エネにより需要増の要因は鈍化または同程度、の3ケースを前提としたそれぞれ、「High」、「Mid」、「Low」のシナリオを提示。その結果、2050年度のデータセンターの電力需要を430億~2,110億kWhと想定し、「データ利用量が増加していくことは確度が高い」とする一方で、基地局の立地や技術開発の動向などから「将来が読みづらい」と、今後の検討に向け、不確実性を十分に認識しておく必要性を強調した。
この他、RITEシステム研究グループリーダーの秋元圭吾氏が独自の温暖化対策評価モデル「DNE21+」による分析結果を紹介し、データセンターの電力需要に関しては、半導体需要増のシナリオモデルを高位・中位・低位のケースで想定・分析。2050年時点で、およそ3倍もの開きがあることを図示した上で、「価格弾力性を考慮する」必要性などを指摘した。
デロイトトーマツコンサルティングの濱﨑博氏らは、日本を地域別人口や工業製品出荷額に応じ按分した電力需要の分析モデルを紹介。2050年のデータセンターの消費電力増については、科学技術振興機構のデータをもとに960億kWhと想定した上、将来的に「立地場所と地域的な電源配置の計画を合わせて検討していくことが重要」などと指摘した。
今回、それぞれの分析結果により想定幅が見られたことなどを踏まえ、OCCTOでは、引き続き「技術検討会社」とさらにコミュニケーションを深めていくとしている。