原子力産業新聞

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再稼働肯定派がジワジワ上昇

25 Mar 2024

石川公一

「今後の原子力発電の利用に対する考え」の推移

日本原子力文化財団は3月22日、2023年度の「原子力に関する世論調査」の結果を発表した。同財団が2006年度から継続的に行っているもので、今回、2023年9月30日~10月13日に、全国の15~79歳男女を対象として、質問票により実施。1,200人から回答を得た。

同調査は、「全国規模の世論調査を定点的、経年的に実施し、原子力に関する世論の動向や情報の受け手の意識を正確に把握する」のがねらい。今回の調査結果によると、「今後日本は、原子力発電をどのように利用していけばよいと思うか」との問いに対し、最も多かった回答は、「原子力発電をしばらく利用するが、徐々に廃止していくべきだ」の42.3%で、前回調査の44.0%を下回った。一方で、「原子力発電を増やしていくべきだ」と「東日本大震災以前の原子力発電の状況を維持していくべきだ」とを合わせた「増加+維持」の回答割合は19.1%、さらに、「わからない」は29.5%で、いずれも、最近10年間では最も高い水準となった。

近年でやや増加傾向にある「わからない」とする回答割合は、年代別にみると、24歳以下で41.5%を占め(前回調査では31.5%)、他の年齢層と比して高く、特に若年層に対し「判断材料となる情報の発信が重要」であることが示された。「増加+維持」の回答割合は25~44歳で最も高く23.0%、「徐々に廃止」の回答割合は65歳以上で最も高く52.7%に上っており、今回の調査では年代による意識の差が顕著にみられた。

また、原子力発電の再稼働に対する考えに関して、最も多かった意見(複数回答可)は、「国民の理解は得られていない」の46.9%で、近年、続いており回答割合もほぼ横ばい傾向。一方で、電力の安定供給、地球温暖化対策、経済への影響などの観点から、肯定的な考えが、否定的な考えに対し、拮抗から徐々に優勢となってきている。

「原子力やエネルギー、放射線の分野において、関心のあること」(複数回答可)については、「地球温暖化」が最も多く52.8%、「電気料金」の45.0%、「原子力の安全性」の38.3%がこれに次いだが、「高レベル放射性廃棄物の処分」は19.4%、「原子力発電所の廃炉」は18.5%で、前回調査からそれぞれ10.6ポイント減、8.3ポイント減となり、廃炉・バックエンド対策に対する関心が低下している傾向がみられた。

原子力に対するイメージとしては、「危険」と「不安」が減少し、いずれも過去最低となったが、全般に否定的なイメージが依然と優勢となっている状況。これまでの調査結果を踏まえ、同財団では、福島第一原子力発電所事故や再稼働の動きに関連し「ニュースによって伝えられる情報量によって変動している」と推測している。同調査では、毎回、原子力やエネルギー、放射線に関する情報源についても分析しており、「テレビニュース」は年代を問わず定着しているものの、今回、「新聞」をあげた回答割合(複数回答可)は、24歳以下で15.7%(前回調査では24.8%)、65歳以上では67.4%(同74.0%)などと、若年層の活字離れが際立っていた。

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