原子力産業新聞

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茨城大「原子科学研究教育センター」を来月開設

29 Mar 2024

石川公一

茨城大学は4月1日、「原子科学研究教育センター」(RECAS:Research and Education Center for Atomic Science)を開設する。東海サテライトキャンパスを拠点に、エネルギー技術や原子・物質・生命科学を融合的に推進する「原子科学」の先進的な研究と高度専門人材の育成を進めていく。RECASは2008年に設置されたフロンティア応用原子科学研究センター(iFRC)を発展的に改組するもの。〈茨城大発表資料は こちら

iFRCが開設された当時は、大強度陽子加速器施設「J-PARC」(東海村)が本格稼働を開始し、茨城県によるビームラインが設置され、中性子の産業応用に対する地域の期待が高まっていた。また、「原子力ルネッサンス」の政策を受けた動きも盛んで、茨城大学では2009年に、日本原子力研究開発機構と全国6大学とが連携しプログラム実施・情報交流を通じ専門人材の育成を図る「原子力教育大学連携ネットワーク」協定に参画するなど、原子力エネルギー利用に対する機運が高揚していた。

RECASは、iFRCがこれまで担ってきた中性子や放射光などに係る研究・教育に加え、原子科学をベースにしたより安全な次世代のエネルギーに関連する新たな技術開発、環境放射線の健康や生命への影響評価に係る取組を総合的に進めるべく、「応用原子科学部門」、「次世代革新炉部門」、「放射線安全部門」を新設し、分散されていた機能を1か所に集結。さらに、これら3部門をつなぎ、学内外の研究施設群との共同研究や社会・地域との連携、新たなプロジェクトの企画・立案を進める「社会/地域課題共考解決室」を設置。同室は、エネルギー問題に関する社会のニーズの把握・分析や地域コミュニケーションのハブとしての機能を担う「原子科学による社会への貢献のフロント役」となることが期待されている。

RECASが拠点とする東海村では、1999年にJCO臨界事故が発生。その後、東日本大震災に伴う影響も受けている。一方で、こうした災害時には地域に近接する原子力機構の施設・専門家らが事故収束や防護対策などの支援に当たってきた。RECASの開設に際し、太田寛行学長は、「事故の経験を有する茨城の国立大学」としての役割をあらためて認識した上で、「世界有数の原子科学研究機関とともに、新たな総合原子科学の確立と研究者・高度技術者の育成に貢献し、持続可能なエネルギー社会の構築を目指していきたい」と、コメントしている。

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