原子力産業新聞

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核融合エネの産業化に向け「J-Fusion」設立

03 Apr 2024

石川公一

「J-Fusion」ウェブサイトのトップページ

核融合エネルギーの産業化を目指す「一般社団法人フュージョンエネルギー産業協議会」(J-Fusion)が3月29日に設立され、4月1日には産業界に対し賛同・参画を呼びかけるウェブサイトが立ち上がった。「J-Fusion」は、昨春に政府の統合イノベーション戦略推進会議が策定した「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」に基づくもの。

同戦略では、物納貢献を主体としたITER(国際熱核融合実験炉)計画が進展することによる調達減少など、今後の核融合関連産業における「空白期間」を懸念した上で、発電実証を行う将来の原型炉建設への民間企業参画を見据え、「フュージョンインダストリーの育成を目的とした場の設立」を明記。これを踏まえ、内閣府(科学技術政策)では、昨年末より「J-Fusion」設立の準備を進め、発起人として、メーカー、商社、ゼネコンなど、計21社の企業が参集した。2024年3月22日には、高市早苗・内閣府科学技術担当大臣が「J-Fusion」の設立を発表。同日、ワシントンDCにおいて、米国の産業協議会に当たる「Fusion Industry Association」他との共催イベントも開催された。

「J-Fusion」では、今後、議決権を持つ特別会員・正会員の他、賛助会員・アカデミア会員・連携会員、個人レベルのサポーター会員を募集。国内外の核融合産業の動向調査、会員企業間の情報共有、技術の標準化や安全規制も含めた国への政策提言、若手との意見交換会、海外産業協議会との連携イベントの開催など、幅広く活動していく。

「J-Fusion」の会長には、京都大学発のベンチャー企業である京都フュージョニアリングの代表を務める小西哲之氏が就任した。研究者として日本原子力研究所(日本原子力研究開発機構の前身)在任時より核融合エネルギーの実現を標榜してきた同氏は、新たな協議会の設立に際し、「業界内外の有志企業を始め、大学や研究所、公的機関や国の組織の同志も集まり、産官学の知恵と人材、知識と経験を集めて新たな産業を興し、未踏のサプライチェーンを構築していく」との決意を強調。副会長には、住友商事執行役員の北島誠二氏、「株式会社 Helical Fusion」代表の田口昂哉氏が就いた。

3月に、京都フュージョニアリングは東京都による「ゼロエミッション東京の実現等に向けたイノベーション促進事業」に、Helical Fusionは経済産業省主催のGX(グリーントランスフォーメーション)スタートアップに関するコンテストの大賞にそれぞれ選定されており、昨今、行政による核融合分野への理解・評価も進んできている。また、科学技術振興機構は29日に、挑戦的な研究開発を推進する「ムーンショット型研究開発事業」として、新たに核融合分野をリードするプログラムマネージャーの募集を開始した。こうした核融合に関連する新興産業や研究分野の開びゃく的な動きが今後、加速化しそうだ。

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