原子力産業新聞

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原子力をめぐるリスク認識が明らかに

05 Apr 2024

石川公一

リスク認知度は、一般層と原子力・放射線知識層との間に差がみられた

原子力・放射線を含む国民のリスク認識に関する調査報告が、4月2日の原子力委員会定例会合で発表された。同委受託によりMRIリサーチアソシエイツが取りまとめたもの。

同調査は、「科学的なデータから推定されるリスクと国民の一人一人が認識しているリスクとの間に乖離がある」との観点から、「一般層」と「原子力・放射線に関する知識を持っている層」の2層に対し、2月にインターネットを通じて実施。各々6,000件、1,000件のサンプル回答を回収した。「原子力・放射線に関する知識を持っている層」は、男性が86.6%で大半を占め、年代別には60代以上が6割を超えていた。「リスク項目」としては、ALPS処理水、産業廃棄物、放射性廃棄物、クリアランス物、化学物質、放射線治療、コロナワクチン、農薬、タバコ、お酒、遺伝子組み換え食品、放射線照射食品、自動車・自転車の運転、電磁波が出る電子機器(スマートフォンなど)など、計21項目を提示。各々、認知度、受容度、危険度について調査した。

調査結果によると、各「リスク項目」の認知度に関し、「他の人に説明できる」、「他の人への説明は難しいが、内容を理解している」と回答した「内容理解」の割合は、原子力・放射線関係の項目で「一般層」の認知度が低く、レントゲン検査などの医療系を除きほぼ4割未満。特に、ALPS処理水の「内容理解」については、「一般層」が29.1%だったのに対し、「原子力・放射線に関する知識を持っている層」が48.9%と、両者の差が顕著だった。

各「リスク項目」とも、認知度は、「原子力・放射線に関する知識を持っている層」が「一般層」を上回っており、両層ともに、最も高かったのはタバコで、それぞれ、91.7%、69.9%。お酒、自動車・自転車の運転、コーヒー・紅茶・緑茶がこれに次いでいた。

また、各「リスク項目」の受容度に関し、「受け入れられない」と回答した割合は、「一般層」の方が「原子力・放射線に関する知識を持っている層」より高く、特に、ALPS処理水については、両者の差が27.9ポイントと、最も顕著。こうした差分は、放射線照射食品の25.2ポイント、クリアランス物の20.8ポイントがこれに次いでいた。

各「リスク項目」について、「受け入れられない」理由としては、「少なくても危険性がある」、「自分でコントロールできない」が主にあげられた。逆に、「受け入れられる」理由としては、「ベネフィットがリスクを上回る」があげられ、今回の調査では、受容度を得点化しさらに詳細分析。受容度は、「ベネフィットがリスクを上回る」との回答割合との間に正の相関がみられた。また。危険度に関して、科学的な危険度ではなく、「回答者が当該項目を自身の生活や健康にとって危険だと感じるか否か」を得点化し分析。その結果、受容度と危険度の間には負の相関がみられた。

今回の調査では、原子力・放射線関連の項目について、リスクの認知度が低い結果となり、「国や原子力・放射線関係者による情報発信や説明にさらなる改善の余地がある」などと提言している。

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