原産協会 「世界の原子力開発の動向」2024年版を刊行
08 Apr 2024
日本原子力産業協会は4月5日、「世界の原子力開発の動向」2024年版を刊行した。世界の原子力関係施設から得たアンケートなど、独自の調査をもとに、2023年における世界の原子力発電開発の主な動向およびデータ(2024年1月1日現在)を取りまとめたもの。
それによると、世界で運転中の原子力発電所は、2023年に、中国で2基、米国、フィンランド、ベラルーシ、インド、UAEでそれぞれ1基ずつ、計7基が営業運転を開始し、一方で、ドイツ、ベルギー、台湾で計5基が閉鎖され、計433基・4億1,244万kWとなった。また、建設中の原子力発電所は、中国で5基、ロシアで2基、エジプトで1基が着工し、計73基に、計画中の原子力発電所は、中国で6基、フランスで2基、韓国で2基、カザフスタンで2基、ウクライナで2基、ブルガリアで1基が新たに計画入りし、計89基となっている。
原産協会の新井史朗理事長は、4月5日の記者会見で同書を紹介。福島第一原子力発電所事故以降のエネルギー情勢を振り返り、「原子力発電の導入が停滞していたが、ロシアによるウクライナ侵攻と中東情勢の緊迫化によって、化石燃料の価格高騰に拍車がかかり、エネルギー安全保障の重要性が認識されるとともに、安定供給と脱炭素の両立が可能な原子力の評価が世界的に高まっている」と強調。2023年の特筆すべき動きとしては、米国のアルビン・W・ボーグル3号機、フィンランドのオルキルオト3号機の営業運転開始をあげた。ボーグル3号機は、米国で35年ぶりの新設プラントで同国初のAP1000。同4号機も2024年中に営業運転を開始する見込みだ。オルキルオト3号機は、欧州で12年ぶりの新設プラントとして、2005年に着工したものの、欧州初のEPRということもあり、様々なトラブルに見舞われ、18年を要し2023年5月に営業運転に至った。
また、近年、欧米諸国では、小型モジュール炉(SMR)の開発が非常に活発になっており、設計認証手続きが進み、他産業からも関心が表明されていることも注目点だ。一例として、新井理事長は、米国大手化学メーカーのダウ・ケミカル社による小型高温ガス炉の導入に向けたX-エナジー社との協定締結、北米最大の鉄鋼メーカーであるニューコア社の製鉄所・SMR併設計画の他、データセンターへの電力供給を図るSMR導入計画も進んでいることを紹介。同書について、「国ごとに最新の動向をまとめているほか、世界中で進む運転期間延長の状況や、SMRの開発動向などを取りまとめている」と、有用性をアピールした。