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藤田医大 核医学を一元化する「セラノスティクスセンター」開所

09 May 2024

石川公一

「セラノスティクスセンター」の加速器エリア

藤田医科大学病院(愛知県豊明市)は、より高度ながん治療の提供に向け、放射性医薬品を体内に投与して診断・治療を行う核医学の専用施設「セラノスティクスセンター」をしゅん工し、5月1日より本格稼働した。放射性同位体(RI)を製造する加速器や、RIを放射性医薬品に加工する合成装置、患者が治療を受けるための投与室も設けられ、放射性医薬品による診断・治療・研究開発を一元的に行う「国内初」の施設として期待が寄せられている。〈藤田医大発表資料は こちら

RIによる核医学検査および治療のうち、核医学治療は、対象となる腫瘍組織に集まりやすい性質を持つ化合物にアルファ線やベータ線を放出するRIを組み合わせた医薬品を、経口や静脈注射により投与。体内で放射線を直接照射して治療するもの。日本では、治療に利用するRIの全量を輸入に依存しており、開発・生産体制の強化が急務となっている。治療に用いるRIは短寿命であるほか、臨床病室も不足していることから、トレーラーハウス(移動体)型治療施設の社会実装試験も行われている状況だ。

核医学検査・治療を行う多くの医療施設では、放射性医薬品を製薬会社などから購入し患者に投与している。製薬会社としては、千葉県に製造拠点を持つ日本メジフィジックスなどが知られている。藤田医大病院では、今回の核医学専用施設の開設に際し、「放射性医薬品のもととなる核種の半減期はフッ素110分、炭素20分と、使用には時間的制約がある」と、核医学の普及に向けた課題を強調。PET(陽電子放射線断層撮影)検査に用いる放射性医薬品には、毎日数回の調達が必要なものもあったという。「セラノスティクスセンター」の稼働により、今後、輸送では対応できない短半減期の核種を製造し、放射性医薬品に合成して「その場で投与する」ことで、多くの患者への医療提供が可能となるほか、新たな核種の製造や新規治療法の研究・開発に資する、と期待を寄せている。

中京地域を軸足とする藤田医大だが、同学は昨秋、羽田空港に隣接した国際交流イノベーションエリアに、次世代医療研究の拠点「東京先端医療研究センター」を開設。海外からの研究者来日や「医療ツーリズム」の拡大にも意気込みがあるようだ。

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