大学発ベンチャーが過去最高に 核融合分野も注目
17 May 2024
大学発ベンチャー数の年度推移
大学発のベンチャー企業数が2023年度、計4,288社に達し過去最高を記録した。これは、経済産業省が5月15日に発表した年次調査報告(速報)によるもので、前年度からの増加数も506社と、調査データのある1989年度以来、最高の伸び幅だった。
大学別には、東京大学が引き続き最も多く420社(対前年度比50社増)。2位には慶應義塾大学が291社(同55社増)で浮上し前年度の京都大学を凌ぐなど、今回の調査では、特に私立大学の躍進がみられている。
大学発ベンチャーにも種々あるが、大学で達成された研究成果に基づく特許や新たな技術・ビジネス手法を事業化する「研究成果ベンチャー」がその筆頭にあげられ、目に見える社会実装の成果、ビジネスチャンスの創出、若手研究・技術者の活躍などから、極めて関心が高い。エネルギー関連では近年、核融合分野が注目されている。京都大学発の「京都フュージョニアリング」、大阪大学発の「EX-Fusion」(レーザー核融合)に続き、最近では、2024年1月、日本大学が、筑波大学によるプラズマ閉じ込め方式「タンデムミラー」などを活用し、両学共同で核融合の早期実用化を目指す「LINEAイノベーション」を設立した。エネルギー安定供給やゼロエミッション電源への関心が高まる中、こうした動きはさらに活発化しそうだ。
高市早苗・内閣府科学技術担当相は、17日の閣議後記者会見で、大学発ベンチャー企業の台頭に関し、「大学における革新的成果を経済・社会のイノベーションに結び付ける担い手として大変重要」との見方をあらためて強調。他省庁とも連携したスタートアップ企業の国内拠点整備や海外展開などに向けた各種支援メニューを例示した上で、「これらの取組の成果が順調に表れてきた。今後も着実に実施していきたい」などと述べた。
なお、核融合エネルギーの実現に向けては、内閣府の主導により、2023年4月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」が策定されたのを受け、2024年3月には産業協議会「J-Fusion」が立ち上がった。5月10日には、年度内の取りまとめを目指し、「安全確保の基本的な考え方」を検討するタスクフォースが始動している。