柏崎刈羽の核物質防護改善「着実に成果をあげている」 東京電力有識者委員会
31 May 2024
柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に関する委員会の模様(右側が委員、左側が東京電力)
東京電力が柏崎刈羽原子力発電所の核物質防護に係る不適切事案の改善措置について、客観的な評価を受けるため、昨夏に設置した有識者委員会の会合が5月30日、同所内で行われた。
同委員会が会合を行うのは、一連の事案を受け、柏崎刈羽原子力発電所について原子力規制委員会が発出していた「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が昨年末、解除されてから初めてのこと(分科会を除く)。小早川智明社長、福田俊彦・原子力・立地本部長、稲垣武之・柏崎刈羽原子力発電所長らが出席し、同社の取組状況に対し委員からの意見を求めた。
冒頭、伊丹俊彦委員長(弁護士)は、2023年6月の委員会設置後1年間の振り返りに際し、評価において重点監視項目とした3つの事項、「協力企業との連携」、「社内の部門間の距離感」、「地域内外のコミュニケーション」をあらためて提示。これまで行ってきた現場視察や意見交換などを通じ、「改善活動は着実に成果をあげている」と評価した上で、「東京電力は新たなステージを踏み出した」との認識を示し、今後は、「自律的に運営できる組織となるよう、自発的に一人一人が改善しようとする組織文化が必要だ」と指摘した。
会合では、東京電力が2023年5月に設置した社長直轄の組織「核物質防護モニタリング室」が、前回(2023年12月)以降の進捗状況、3つの重点事項に対する事務局としての評価を説明。その中で、セキュリティ部門と他部門との「距離感」について、IDカードを保管するロッカーの未施錠や暗証番号の未設定が数件確認されたことから、内部脅威に関し「認識の浸透が十分とは言えない」と、課題をあげた。続く各委員の発言については非公開で実施。
会合終了後、記者団の取材に応じた伊丹委員長は、後日、今回の会合を踏まえた提言を正式に公表するとした上で、2年目に入る同委員会の新たな取組として、「発電所で働く意義・目的の理解醸成を評価の大きな切り口として見ていく」ことを強調。また、これに関して、小早川社長は、柏崎刈羽原子力発電所内で従事する人員が協力企業を含め約6,000名に上ることをあげ「今後1年間の活動として非常に重要となる」との認識を示したほか、IDカード管理の不備については「一人一人がリスクを認識する必要がある」などと、さらなる改善活動の必要性を示唆した。