原子力産業新聞

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東芝ESS ポーランド初の原子力発電所に向け地元企業と合意

03 Jun 2024

石川公一

東芝エネルギーシステムズは5月30日、ポーランド初の原子力発電所向けの機器納入および保守に関し、地元企業2社と協業検討に合意した。今後、欧州現地法人の東芝インターナショナル・ヨーロッパ社とともに、蒸気タービンおよび発電機などの供給に向け、同国地元企業であるロックフィン社、エトスエナジー社の2社とそれぞれ、機器納入、保守に関する協業を検討していく。〈東芝発表資料は こちら

ポーランドでは、石炭火力発電への依存度が高く、排出ガスに起因した酸性雨などの環境影響が問題となっており、これまでもIAEAや日本政府・研究機関の協力で、浄化を行う加速器(電子線)を建設・運転するなど、対策を講じ、その副産物として肥料の生産にもつながってきた。2000年代に入ってからは、エネルギー安全保障の確保と石炭火力発電による環境負荷の低減のため、原子力発電の導入に向けた準備が進められ、同国政府は2022年11月に、国内初の原子力発電所を建設する決議を採択。エネルギー集約型の産業が中心のポーランドでは、昨今、小型モジュール炉(SMR)の導入を目指した動きも活発化している。

今回の合意に際し、東芝ESSは、「建設・メンテナンスや、再稼働向け対策、福島第一原子力発電所の廃炉対策、廃止措置対策、燃料サイクル、さらには次世代炉・核融合の未来に向けたエネルギー開発など、幅広い事業領域に積極的に取り組んでいる」と、自社の原子力発電プラントに関する豊富な経験と技術力を強調。その上で、「グローバルでの電力の安定供給と環境負荷低減の両立に貢献していく」と、将来展望を述べている。

東芝ESSではこれまでも、ポーランド初の原子力発電所の機器納入に向け、2022年に米国現地法人とともに、米国の建設会社であるベクテル社との協業で合意に達している。この他、最近の原子力・放射線分野での国際展開に関しては、2024年5月末に、韓国に納入した重粒子線治療装置の回転ガントリーによる治療が開始されており、同社の技術力発揮に注目が集まるところだ。

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