原子力産業新聞

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核セキュリティ対策を巡る内外の動きが活発化

06 Jun 2024

石川公一

ICONSで演説を行う辻外務副大臣

核セキュリティ対策の強化に向け昨今、国内外で注目すべき動きがみられている。5月20~24日に、IAEA主催の「核セキュリティに関するIAEA国際会議」(ICONS、ウィーン)が開催され、日本からは、政府代表として辻清人外務副大臣が初日の閣僚会合に出席。同会議は、2013年の初回開催以来、概ね4年ごとに行われており、今回、第4回会合での議論は、今夏のパリ五輪開催を前に、国際的関心が高いものとみられる。〈外務省発表資料は こちら

核セキュリティとは、テロリストなどが魅力とする

  1. 核兵器の盗取
  2. 盗取された核物質を用いた核爆発装置の製造
  3. 放射性物質の発散装置の製造
  4. 原子力施設や放射性物質の輸送等に対する妨害破壊行為

――といった脅威が現実のものとならないよう、とるべき措置を指しており、国内でもIAEAミッションによる提言などを踏まえ、所要の法整備が図られてきた。

辻外務副大臣は、今回のICONS閣僚会合での代表演説の中で、「各国におけるエネルギー需要の増大や脱炭素の世界的潮流の中で、原子力発電への国際社会の関心が高まる中、原子力の平和的利用を進める各国は、非国家主体への核兵器や核物質の拡散リスクといった核セキュリティに対する認識を向上させ、最高水準の核セキュリティの確保に向け取り組んでいく必要がある」と強調。閣僚会合で発出された議長声明では、加盟各国による小型モジュール炉(SMR)への関心高揚、サイバー攻撃に関するリスク対応など、昨今の情勢にも留意し、引き続き核セキュリティ分野のコミュニケーション向上を図っていくことが盛り込まれた。

議長声明では、IAEA核セキュリティ実演訓練センターの開所を歓迎した上で、加盟各国による能力構築の重要性も強調している。

日本では、これまでも核セキュリティ分野の能力構築に向け、技術的な立場から貢献してきた。2024年3月末には、日本原子力研究開発機構の核不拡散・核セキュリティ総合支援センター(ISCN)による核物質防護実習フィールド(PPフィールド)がリニューアル。5月10日には、元ISCNセンター長で現在、原子力委員会委員を務める直井洋介氏出席のもと、新施設の開所式が行われた。PPフィールドは、核物質防護・核セキュリティに係る国内外の人材育成を支援すべく2012年度に整備された施設で、実際の脅威を模擬し侵入検知センサーや監視カメラなどの機能を体験型で実習する施設だ。セキュリティ確保上、報道関係者による取材も厳しく制限されている。PPフィールドはこのほど、12年に及ぶ使用による経年劣化から、建屋の更新を中心とした整備・拡充を実施。バーチャルリアリティ(VR)システムを更新したほか、新たな脅威に対応するトレーニングシステムの開発機能も備え、「ISCN実習フィールド」としてリニューアルされた。

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