原子力産業新聞

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総合エネ調 データセンター等による需要急増でヒア

07 Jun 2024

石川公一

IEAによる世界のデータセンター・AIの電力需要見通し

総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=隅修三・東京海上日動火災保険相談役)は6月6日の会合で、将来的な電力需要に関し、通信・半導体・鉄鋼関係企業よりヒアリングを実施。電力インフラへの先行投資の重要性が浮き彫りとなった。〈配布資料は こちら

同分科会は、5月15日に次期エネルギー基本計画策定に向けた検討をキックオフ。その中で、GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた取組の進展や、AIの社会実装に伴うデータセンター拡大など、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展による電力需要増加の可能性が指摘された。

今回の会合ではまず、資源エネルギー庁がデータセンター需要の予測について整理。IEAの予測によると、2024年1月時点で、世界に8,000以上あるデータセンターの33%が米国、16%がEU、10%が中国に立地し、2022年から2026年にかけて、その電力需要はいずれも1.3倍程度増加する。また、世界のデータセンター・AIなどの電力需要は、同じく4,600億kWhから8,000 億kWhまで急増する見通しだ。英国の電力系統企業による調査では、同国のデータセンターの電力消費量が、2050年に2020年のおよそ10倍にまで達する可能性もあるという。

国内のデータセンターの電力消費量については、科学技術振興機構の調査から、2018年の140 億kWhが、省エネの進展度合いに応じ、2030年に60~900億kWhに、2050年に1,100億~12兆kWhに変動すると説明した。

これを受け、ソフトバンク、キオクシア、NTT、JFEホールディングスよりヒアリング。ソフトバンクは、同社が北海道苫小牧市に2029年までに整備する総受電容量30万kW級の大型AIプロジェクトなどを紹介した上で、将来的な計算需要の伸びから、国内のデータセンターが必要とする発電設備容量は、2030年から2040年の10年間で約8倍の3,300万kW(現在の国内原子力発電総設備容量に相当)に急増すると試算。電力需給それぞれの建設リードタイムに関し、データセンターが3年なのに対し、発電所はLNG6年、風力・地熱8年、原子力17年と、大きな開きがあることを示し、「発電所や系統への先行投資が必要」と、指摘した。

NTTは、光通信を利用した未来のネットワーク構想「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)を紹介。超低消費電力実現の可能性を述べながらも、電力事業の将来的課題として、「電力量確保」、「価格コントロール」、「連系線確保」、「法制度見直し」をあげた。

半導体製造のキオクシアは「基本的に24時間・365日のフル稼働」が必要な現状を述べ、鉄鋼業のJFEホールディングスは、脱炭素化に向けて取り組む倉敷製鉄所(岡山県・水島コンビナート)の「高効率・大型電気炉」導入計画を紹介。電力需要の大幅増を見通し、それぞれ、原子力発電に係る課題として、東日本で再稼働が進まないこと、中国電力島根2・3号機の早期再稼働・運転開始の必要性などを訴えた。

委員からの意見では、AIを利用した省エネの進め方・定量化の検討、需給調整に加え災害対策も見据えた蓄電池の活用などに関する提案もあった。

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