原子力産業新聞

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日立・小島社長 投資家らに対し「企業価値を一層向上」と強調

13 Jun 2024

石川公一

投資家らとの質疑に応じる日立経営陣(左から3人目が小島社長)

日立製作所は6月11日、同社の取り組む「デジタル」、「グリーン」、「コネクティブ」の各戦略について、投資家・報道関係者らを対象に説明する「Hitachi Investor Day 2024」を開催した。〈配布資料は こちら

冒頭、小島啓二社長は、日立グループが事業のデジタル化を加速すべく掲げるビジョン「Lumada」のもと、「厳しい環境の中にも常に『成長』の2文字を追い求める企業でありたい」との経営姿勢を強調。AI技術に関しては、「新たなビジネスチャンスを生む」ものと大いに期待。一方で、それに伴うデータセンター需要の急拡大や半導体供給不足、中長期的には「電力不足の深刻化」などを懸念し、こうした将来課題に対しても「One Hitachi」で取り組み、「企業価値を一層向上させていく」との意気込みを示した。

「グリーン」戦略については、グリーンエナジー&モビリティ戦略企画本部長のアリステア・ドーマー氏が登壇し説明。同氏は、昨今のAI技術の加速化を「デジタル革命、社会の転換」と称した上で、「膨大なデータセンターと大量のグリーンエネルギーを必要とする。それによってパワーグリッド事業のみならず、原子力事業における小型モジュール炉(SMR)の潜在需要も見込まれる」との見通しを述べた。さらに、2050年までの世界的な電力の産業需要に関し、IEAによる調査をもとに、保守的に見ても10兆kWh(日本の年間電力消費量の10倍規模に相当)オーダーでの増加が見込まれると予測。同社のデジタル技術を活用した最近の国内電力供給におけるソリューション事例として、2023年11月に送配電システムズ合同会社(全国エリアをカバーする送配電ネットワーク10社)より受注した「次期中央給電指令所システム」を紹介。昨今、電力需給のひっ迫が懸念される中、周波数制御などを通じ全国の需給運用を統合する初のシステムとして期待されている。

2024年度以降のグローバル成長を見据え、ドーマー氏は、「市場は巨大で、われわれは強気な目標を設定している」と強調。モビリティの分野では、特に日立が強みとする鉄道事業に関して「そのサービスビジネスは圧倒的に収益性が高い」と期待し、一例として2022年に受注した米国メリーランド州・ワシントン地下鉄の車両製造工場・試験線の建設プロジェクトを紹介した。コンパクトでメンテナンスフリーな車両設計は、日本におけるノウハウも活かされそうだ。また、エネルギーの分野では、「SMRは非常に大きなポテンシャル」として、米国GEベルノバ社の原子力事業会社であるGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)による「BWRX-300」(BWRをベースとした30万kW級のSMR)開発に向けたパートナーシップの他、今後、カナダ、英国、ポーランドでの市場拡大も展望した。

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