原子力学会 大井川会長が就任会見
05 Jul 2024
日本原子力学会の会長として、大井川宏之氏(日本原子力研究開発機構上級執行役)が選任された。6月14日に行われた通常総会で、大井川会長他、副会長として、佐藤拓氏(原子力エネルギー協議会)、越塚誠一氏(東京大学)、小崎完氏(北海道大学)らで構成する2024年度新体制が決定。大井川会長は7月3日、就任会見に臨み抱負を述べた。〈原子力学会発表資料は こちら〉
その中で、大井川会長は、学会運営のキーワードとして、「伝える」、「つながる」、「はぐくむ」の3つのキーワードを提示。2年間の副会長在任期間を振り返り、「学会の取組が伝わっていない」と、発信力の弱さを猛省。今後は、SNSを通じた発信や積極的なプレス発表に努めていくとした。また、「原子力というと、どうしてもガードが固いと思われがち」などと、他分野から乖離したいわゆる「ガラパゴス化」を懸念。学会内の部会同士での交流、他の学協会とのコミュニケーションを活性化し、相互に課題解決に向け連携を図っていく考えを示した。
大井川会長は、原子力機構の理事在任時、原子力科学研究、安全研究、防災支援、人材育成など、極めて重要な部門の統括を担当。人材育成に関しては、原子力委員会や産官学連携のプラットフォーム「原子力人材育成ネットワーク」などの場で、その重要性を訴え続けてきた。会見の中で、同氏は、工学系学生のキャリアパスを拡充する必要性にも言及し、「色々な議論をしている姿を通じ、原子力の魅力を発信していきたい」と抱負を語った。昨夏には同学会主催で、原子力を専攻する大学・院生・高専生らとメディア関係者を交え、長期にわたる福島第一原子力発電所廃炉の道筋をテーマとしたシンポジウムも開催されている。大井川会長は、「若い人と一緒になって」成長する学会として、価値をアピールしていくことを強調した。
記者団から、革新的技術の関連で、核融合などを中心にベンチャー企業が台頭する欧米と比較した日本のスピード感の見劣りに関して質問があったのに対し、大井川会長は、「魅力的なコンセプトを提案していくことが学会としての役割」と述べ、産業界が参入しやすい仕組み作りに向け、学協会標準の策定などを通じ貢献していく考えを示した。
現在、原子力学会の会員数は、概して「下げ止まり」の状況。会員がそれぞれの立場で参画する学会だが、一例として、現行の新規制基準のあり方に対する働きかけ関し、大井川会長は、「ニュートラルな議論は学会だからこそできる」と、存在意義を強調した。副会長を引き続き務める越塚氏は、日本電気協会の原子力規格委員会で規格基準の策定を技術的立場からリードしてきている。今後は、新体制のもと、規制側に対する提言発信も期待できそうだ。