原子力産業新聞

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核融合エネ 早期実現を目指し原型炉研究開発方針見直しへ

11 Jul 2024

石川公一

ITER計画の進捗状況

文部科学省の有識者会議は7月10日、核融合エネルギーの早期実現を目指し、発電実証を行う原型炉の研究開発に向けた方針を見直す考えを示した。〈配布資料は こちら

現在の原型炉研究開発の方針は、2017年に決定。原型炉への移行判断やチェック&レビューの時期については、建設中にあるITER計画の運転段階にも留意している。今回、見直しに当たっては、ITER計画の進捗状況の他、諸外国が取り組む核融合開発の目標も踏まえ、

  • 社会実装につながる科学的・技術的に意義のある発電実証を可能な限り早期に実現する
  • 原型炉目標(以下1~3)や原型炉段階への移行判断を見直す
  1. 数十万kWを超える定常かつ安定した電気出力
  2. 実用に供し得る稼働率
  3. 燃料の自己充足性を満足する総合的なトリチウム増殖を実現する
  • ITER計画/BA(幅広いアプローチ)活動の知見や新興技術を最大限活用する
  • 原型炉実現に向けた基盤整備を含めたバックキャストに基づくロードマップを策定する

――ことがポイント。今後、有識者会議下の原型炉開発総合戦略タスクフォースで検討を進めていく。

核融合エネルギーの産業化に向けては、内閣府(科学技術政策)が2023年4月に策定した「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を踏まえ、2024年4月には「フュージョンエネルギー産業協議会」(J-Fusion)が設立。原型炉研究開発に関して、最近の官邸レベルの動きとしては、6月に、「2030年代の発電実証の達成」を目指す方向性が、「統合イノベーション戦略」、「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画2024年改訂版」に盛り込まれたことがあげられる。また、現在、見直しが進められているエネルギー基本計画における位置づけの明確化を求め、自由民主党プロジェクトチームが提言をまとめるなど、各界で核融合エネルギーの実用化を見据えた動きが見られている。

今回の有識者会議では、ITER機構副機構長の鎌田裕氏が出席し、ITER計画の進捗状況を説明した。建設工事の進捗率は85%だが、ファーストプラズマ達成は、当初の2025年から2034年頃に遅れる「新ベースライン」が検討されている状況だ。

ITER計画の遅れに関しては、ITER理事会開催を受けて既に報道されているが、日本経済団体連合会の十倉雅和会長は7月8日の記者会見で、「地球温暖化は待ったなしの課題」と、核融合を含む脱炭素エネルギー開発の必要性を強調した上で、「これまでに得た知見をもとに、各国が独自に実用化に向け切磋琢磨すればよいもの」と、前向きな考えを示している。

また、高市早苗内閣府科学技術担当相は、7月5日の記者会見で、7月9~11日にイタリア・ボローニャで開催されるG7科学技術大臣会合への出席について紹介。今回、議論を集約するコミュニケに、核融合エネルギーについて初めて盛り込まれる見通しを明らかにした。高市大臣は、日本がG7議長国となった昨年、同会合(5月、仙台)の議論をリードしている。

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