柏崎刈羽の再稼働に向け国が県民説明会
17 Jul 2024
説明会開始に際し挨拶に立つ新潟県・原防災局長
「柏崎刈羽原子力発電所に係る国の取組に関する県民説明会」が7月15日、新潟県長岡市で始まった。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働をめぐっては、現在、地元の判断が焦点となっている。県主催による同説明会は、内閣府(原子力防災)、資源エネルギー庁、原子力規制庁が説明を行い、県民からの質疑に応じるもので、今後、8月上旬にかけて、十日町市、小千谷市、見附市、上越市、燕市、出雲崎町と、県内7か所で開催される。〈配布資料は こちら〉
柏崎刈羽原子力発電所については、2023年12月27日に、一連の核物質防護事案を受け原子力規制委員会により発出されていた「特定核燃料物質の移動を禁ずる是正措置命令」が解除。同日、既に新規制基準適合性に係る原子炉設置変更許可が発出済み(2017年12月)の同7号機について、東京電力に対する「原子炉設置者としての適格性の再確認」もクリアした〈既報〉。県は、再稼働に関し、地元判断のカギとなる技術委員会による議論が佳境にある中、2024年6月13日に花角英世知事らが齋藤健経済産業相を訪問〈既報〉。資源エネルギー庁より、「柏崎刈羽原子力発電所に係る国の取組について、県民の皆様に直接説明する機会を設けたい」との依頼を受け、説明会の開催となった。
長岡市の説明会では、関係3府省庁の課室長クラスらが出席。規制庁は、去る2月にも県主催の説明会の場で、東京電力の核物質防護に係る追加検査および原子炉設置者としての適格性判断の再確認について、県民との質疑に応じているが〈既報〉、6月12日までに、東京電力が同7号機への燃料装荷を完了し健全性確認を一通り実施した現状を踏まえ、あらためてこれまでの流れを説明。その中で、混同されがちな原子力施設における「セキュリティ」と「セーフティ」に関する対応課題について、発電所を自動車に例え、それぞれ、「カギがない、免許証がないことで、不審者により盗取される」、「ブレーキが利くか、ガソリンが漏れていないか、タイヤが摩耗していないか、により安全運転に影響を及ぼす」ことと、両者の区別を説いた。
内閣府は、柏崎刈羽地域における原子力防災の取組、国の支援体制の検討状況について説明。複合災害時の避難に係る基本的考え方としては、「複数の避難経路の設定」、「海路・空路避難、屋内退避の継続」、「実動組織(警察、消防、海上保安庁、自衛隊)による住民避難支援」をあげた。一方で、県民からは、2007年3月の能登半島地震、同年7月の中越沖地震に鑑みた不安の声も多く、また、屋内退避については、現在、規制委の専門家チームが効果的な運用方法を検討しているが、「夏にライフラインが途絶した状態で、窓を閉めておくことはできない」といった指摘もあった。
資源エネルギー庁は、エネルギー・原子力政策の現状について説明。その中で、東京電力管内の電力需給に関し、今夏7月の予備率が4.1%と、予断を許さぬ状況にあることを懸念した上、柏崎刈羽7号機が再稼働することで、「約2.4%の予備率向上に寄与する」との試算を示した。首都圏で最高気温37℃を記録した7月8日、東京電力は中部電力より最大20万kWの電力融通を受けている。
県民からは、説明会の趣旨に直結しない発言も多く、核燃料サイクルの停滞、損害賠償や避難指示解除の基準に係る疑問、再生可能エネルギーのポテンシャルの他、「そもそも再稼働が前提となっており、答えになっていない」といった非難の声もあった。
今回の説明会には、オンライン・サテライト会場(県内7か所)も含め、計120名が参加。花角知事は、7月17日の定例記者会見で、「特定の人しか関心を持ってもらえないのでは困る」などと述べ、今後、他会場の状況を注視していく考えを示した。