原子力産業新聞

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原子力学会 地層処分用語で提言

04 Sep 2024

日本原子力学会は9月3日、地層処分における重要な用語の解説やコミュニケーション上の配慮事項などを取りまとめた成果物「語彙基盤(地層処分の言葉)」を公表した。

地層処分事業を推進する原子力発電環境整備機構(NUMO)の依頼により、同学会の特別専門委員会が2021年より検討を進めてきたもの。今回の成果物公表に際し、同専門委員会では、地層処分に係る専門用語に関して、「長年の議論や検討を経て形成された独特の意図や含意がしばしばある」、「専門家同士でも議論のすれ違いや誤解が生じている」との認識から、コミュニケーションを進める上で、困難の一因となっていることを指摘。特に、様々なステークホルダーとの相互理解のカギとなる用語として、「閉じ込めと隔離」、「地質環境」、「セーフティケース」、「安全評価」の4つを取り上げ解説。さらに、実際のコミュニケーションにおける活用に向け、心理学や情報科学の立場からも考察を深めた付属資料「語彙基盤(地層処分の言葉)安全コミュニケーションの提案」を示している。

付属資料では、まず、コンテキスト(ある事物や情報を理解するため、必要な状況や環境の枠組み)の重要性に着目。特に、コミュニケーションが取りづらく、かつ間違いの許されない医療現場ではなおさらであろう。同資料の整備に当たっては、国立国語研究所による報告書「病院の言葉をわかりやすく-工夫の提案」を参考とした。同報告書では、「病院の言葉」のわかりにくさの原因を、「患者に言葉が知られていない」、「患者の理解が不確か」、「患者に理解を妨げる心理的負担がある」に整理し、日常語での言い換え、混同を避ける言い方、表現の工夫などを提案している。同専門委員会では、これらに関して、「地層処分の用語についても同様に重要」と認識。資料作成に向けて、地層処分は他分野の専門家との認識の間にも「ギャップ」が存在することを「検討の出発点」とした。

特に「ギャップ」が生じている重要な用語として、「閉じ込めと隔離」、「地質環境」、「セーフティケース」、「安全評価」の4つを抽出した上で、その「ギャップ」の解消を念頭に、段階を追って解説している。

その中で、コンテキストの重要性に関して、地層処分で用いられる「隔離」では、「日常の経験とは異なる時間枠、空間枠の下で安全を確保してそれを確かめる」というコンテキストに配慮し、「他の廃棄物に対する従来の処分方法をそのまま踏襲したものではない」ことを注意すべきと指摘。総じて、「分野や立場を越えた共通理解を形成する上で、地層処分分野におけるコンテキストを明示的かつ丁寧に説明していく」よう提言している。

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