原子力産業新聞

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規制委 「常陽」のRI生産で「審査書案」了承

05 Sep 2024

石川公一

原子力機構「常陽」

原子力規制委員会は、9月4日の定例会合で、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(茨城県大洗町、ナトリウム冷却型、熱出力100MW)における医療用ラジオアイソトープ(RI)の生産について、原子炉等規制法に照らし「適合している」とする「審査書案」を了承した。

「常陽」は、2007年5月の定期検査入り以降、運転を停止中。2011年3月の東日本大震災を挟み、2023年7月に新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可に至っている。その後、原子力機構は2024年2月、RI生産用実験装置を追加する原子炉設置変更許可を申請。審査では、新規制基準許可以降に公表された火山に関する知見の反映を評価したほか、ほとんどの項目について、既許可申請書から変更する必要がないことを確認した。「審査書案」については、パブリックコメントを行わないことが委員間で了承され、今後、原子力委員会および文部科学相への意見照会を経て、正式決定となる運び。

原子力機構では、「常陽」を活用し、次世代革新炉開発に向けた照射試験とともに、がん治療への高い効果が期待される医療用RIの製造能力の実証を行う計画。原子力委員会が2022年に策定した「医療用等RI製造・利用推進アクションプラン」では、医療用RIの一つであるアクチニウム225大量製造の研究開発強化を図るため、「常陽」を活用し2026年度までの製造実証を目指すとされている。核医学を中心としたRI関連分野を「わが国の強み」とするねらいだ。

アクチニウム225を用いた治療は、病巣の内部からアルファ線を当てるもので、治療効果が高いほか、遮蔽が不要なため病室への入退室制限を緩和できるメリットもある一方、短寿命(半減期10日)でもあり、世界的に供給不足となっている。

「常陽」の運転再開は、新規制基準対応工事を経て2026年度半ばの予定。

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