原子力産業新聞

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新潟県知事 柏崎刈羽再稼働の判断を保留

11 Sep 2024

石川公一

柏崎刈羽原子力発電所全景

新潟県の花角英世知事は9月11日の定例記者会見で、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関し、「県民の気持ちがどう固まるのかを見極める」段階にあると、慎重な姿勢を示した。

東京電力では、同7号機について、燃料装荷完了後、6月までに全体的な健全性確認を実施し、「原子炉の起動に必要な主要設備の機能が十分に発揮できること」を確認。県では、7月15日~8月10日、県内各地で説明会を開催し、内閣府(原子力防災)、資源エネルギー庁、原子力規制委員会と県民との質疑応答の場を設けた。柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に係る地元判断に関しては、花角知事が議論の前提としていた「福島第一原子力発電所事故に関する3つの検証」(事故原因、事故による健康と生活への影響、原子力災害時の安全な避難方法)について、昨秋に総括報告書がまとまったほか、県と県内市町村長との話合いも実施されている状況だ。

一方、政府では9月6日、岸田文雄首相出席のもと、原子力関係閣僚会議が行われた。去る8月27日の「GX実行会議」でも示された通り、岸田首相は、「東日本の電力供給構造の脆弱性、電気料金の東西の格差、今後の産業競争力や経済成長を左右する脱炭素電源確保などの観点」を踏まえ、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の重要性をあらためて強調。今回、「避難対策を中心とする具体的対応の方針」を確認した上で、関係閣僚に対し、事業者に対する指導・監督、地元の地理や気候を踏まえた避難路の整備など、避難対策の実効性向上を図るよう指示した。同方針では、県民説明会などで寄せられた地元からの要望も整理。除排雪体制の強化、能登半島地震を踏まえた屋内退避運用の見直しの他、首都圏の理解促進や経済的なメリットを感じる取組を求める声もあがっている。

これに関し、花角知事は11日の会見で、「政府が前面に立って地元の理解を得ていくという表れ」と、一定の評価を示す一方で、「入口に入っただけ、方針を示しただけであって、これから検討するということ。検討が進む中で県の要望に沿った結論となることを見極めたい」とも述べた。「避難対策を中心とする具体的対応の方針」では、避難路の整備に向け、新たに、経済産業省、内閣府(原子力防災)、国土交通省による「協議の枠組み」を立ち上げることが盛り込まれている。大地震に伴う複合災害も懸念される中、土砂災害対策、橋梁の耐震強化なども課題だ。花角知事は、各取組のスケジュール感については明示しなかったが、県もメンバーの一員として検討を進めていく考えを述べた。

なお、柏崎刈羽原子力発電所の他号機に関しては、9月2日に6号機の設計・工事計画の認可が原子力規制委員会により発出されている。

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