原子力産業新聞

国内NEWS

近畿大 放射線医療の高度化につながる新システム開発

29 Jan 2025

石川公一

新システムのイメージ

近畿大学の研究グループは1月28日、胸部のX線撮影やCT検査での呼吸状態を、非接触で確認できる新たなシステムを発表した。〈近畿大資料は こちら

電子部品メーカーのSMKとの共同により、「ミリ波」と呼ばれる波長数mm程度で微細振動を検知できる電磁波を用いて可能にしたもの。近畿大医学部の研究グループは、この「ミリ波」を使用したセンサーが比較的安価で、ペットの体調管理、高温環境下における工場設備の監視、防犯システム、自動車の安全装置など、人目につかないところで広範に利用されていることに着目。SMKが開発した「ミリ波センサー」による呼吸波形の計測を、ボランティア20人の協力を得て実施した。被験者の胸腹部にミリ波を照射し、その反射波から呼吸による体表面の動きを波形として取得した上で、従来法と比較した結果、これまで計測が困難であった乳幼児の呼吸状態も正確に検出できたほか、CT撮影時の仰向け状態や、X線撮影時の立位の状態の双方で、安定した測定が可能なことが確認された。

乳幼児のⅩ線撮影は技術者とのコミュニケーションが取りづらく、体位の静止や息止め指示が伝わらないことなどが、正確な診断の支障となっていた。また、目視では技術者の経験と勘によるところが大きいほか、脱衣により患者に羞恥をもたらすことも課題だ。

研究グループでは、新システムの特長として、既存のⅩ線装置やCT装置への取り付けが容易で、従来の呼吸モニタリング機器と比べ大幅なコスト削減が可能なことをあげているほか、再撮影の必要性が少なく患者の負担が軽減され、診断精度が向上し医療の質が改善されると期待。呼吸状態をリアルタイムで確認しながら、より精密な放射線治療も実現できる可能性から、今後さらに応用研究を進めていくとしている。

cooperation