原子力産業新聞

国内NEWS

「かべ新聞コンテスト」優秀作発表 エネ庁

04 Feb 2025

石川公一

最優秀賞・佐藤未琴さんの作品

資源エネルギー庁は2月3日、小学校高学年を対象とした「かべ新聞コンテスト」の2024年度優秀作品を発表した。エネルギー教育推進事業の一環として継続的に行われているもので、「わたしたちのくらしとエネルギー」をテーマとする自由研究を「かべ新聞」の形にまとめた作品を募り審査。最優秀賞は、佐藤未琴さん(札幌市立新川小学校6年)の「Shift in thinking 先駆者から伴走者へ」、海津奏太さん(新潟市立濁川小学校5年)の「生き物と僕たちの未来新聞」が受賞した。

佐藤さんは、かつて地元の北海道に多く存在した炭鉱に着目。自身の祖父も三笠市の炭鉱で働いていたという。石炭は、戦後日本の高度経済成長を支えてきたエネルギーの「先駆者」といえるが、作品ではまず、「石油の需要に押され炭鉱は閉山し、今は大きな立坑跡を残しているだけ」と、問題提起。将来のエネルギーを見据え、「化石燃料から排出される温室効果ガスの影響もわかり始めて、化石燃料以外のエネルギー資源を取り入れて電気を作るようになりつつあります」と、エネルギー利用と環境保全の関連にも触れた上で、エネルギー源別の「S+3E」に係る現状を調べ上げ作表した。石炭については、家族の保管していた石炭試料からの話をもとに関心を深め、「ほかの化石燃料にくらべて安い」と、経済効率性のメリットをあげる一方で、「CO2排出量が多い」といった環境適合性の課題も指摘。原子力については、「長時間安定的に発電できる」、「発電時にCO2を排出しない」と述べている。

今の小学生はもう福島第一原子力発電所事故の発生時を知らない世代だ。佐藤さんは、「国内で調達できるエネルギー資源を考える」と、エネルギー自給の重要性を強調。その中で、原子力発電については、「課題も多く不安に思う人もいると思います。私は、こわがるだけでなく正確な知識を学んでいきたいと思います」と、さらに学んでいく意欲を示している。かべ新聞では、結論として、「2030年のエネルギー資源は、もうしばらく化石燃料の力を使って発電するようです」と、多様なエネルギー需給の選択肢を考え続けていく必要性を示唆。佐藤さんは、「化石の博物館」と呼ばれる三笠市立博物館を見学し、炭鉱跡地でCCUS(CO2回収・有効利用・貯留)の実証が行われていることを知る。「炭鉱跡をもう一度」との見出しを掲げ、「昔、エネルギーを手に入れるために使われた場所が、今度は別の方法で利用できるのはすごいこと」と述べ、今でも石炭はエネルギーの「伴走者」であることを強く訴えている。

本作品に対し、審査委員長の講評では、「化石燃料の利用の変遷を踏まえながら、現在のエネルギー利用を捉え、その上で未来を考えるというしっかりした構成だ」と評価している。

学校賞を受賞した札幌市立桑園小学校からは6作品が入賞。食とエネルギーの関係や、雪を利用したエネルギーに係る研究もあった。

原子力発電所の立地市町村では、美浜町エネルギー環境教育体験館「きいぱす」の支援による美浜町立美浜中央小学校・同美浜東小学校の生徒の共同作品が特別賞を受賞した。

cooperation