原子力産業新聞

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原子力機構 地下研で未知微生物の働きを解明

05 Feb 2025

日本原子力研究開発機構は2月4日、花崗岩、堆積岩の岩盤をそれぞれ対象とした地下研究施設となる瑞浪超深地層研究所、幌延深地層研究センターを活用し、地下の未知微生物の働きを解明したと発表した。〈原子力機構発表資料は こちら

原子力機構はこれまで、鉱山跡地なども利用し水文学的見地などから地質調査に取り組んでおり、他組織との共同も得たその成果は高レベル放射性廃棄物地層処分の研究開発にも貢献。その中で、地下深部には豊富な生命体が存在することが近年の研究によりわかってきたものの、そこに生きているごく微小サイズの「微生物」の働きは解明されていなかった。

本研究では、地下に生息する微生物群集を「微生物コミュニティ」と称し、数年間にわたりその代謝反応を網羅的に解析。深度140~400mの地下環境から地下水を定期的に採取し、地下水中の微生物が持つ遺伝子情報を「メタゲノム解析」と呼ばれる手法を用いて継続調査した。その結果、花崗岩環境からは、細菌群および古細菌群が高い割合で存在し、深度が深くなるにつれ、その割合が減少する傾向が示された一方、堆積岩環境では、細菌群の検出割合は非常に低いものの、古細菌群の中で例外的にアミノ酸や脂質などを合成するものが約90%存在することが示され、花崗岩と堆積岩とで「微生物コミュニティ」の組成が異なることがわかった。また、幌延の堆積岩地下では、鉄、有機物やCO2が豊富なことに起因する微生物にとって有用な代謝反応に伴い、「水素やCO2などの地下環境に共通した物質が主なエネルギー源として利用されている」と述べている。

高レベル放射性廃棄物の地層処分は地下300m以深に施設を建設することとなっている。原子力機構では、「微生物コミュニティの特性から、地下水の流れが非常に遅い環境においては、地下環境が長期にわたって安定している」と結論付けている。今後、地層中での放射性核種の移行解明に向け、微生物の遺伝子情報も踏まえ、地層処分システムの安全性に対する信頼度向上を図るとともに、地下水汚染などの環境問題の解決や、地下微生物研究が、抗生物質や酵素などの新しい医薬品・食品の開発に役立つ可能性も見据え、幅広い分野における発展や社会的に重要な問題の解決に貢献していくことを期待している。

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