原子力産業新聞

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東芝 韓国での重粒子線治療装置シェア100%

07 Apr 2025

石井敬之

東芝ESS製の重粒子線治療装置(回転ガントリー)は世界最小を誇る

東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は4月7日、韓国のアサンメディカルセンターから重粒子線治療装置を受注した。​韓国国内の重粒子線治療装置は、すべて東芝ESSが供給することとなり、韓国市場でのシェア100%を達成した。

今回受注した治療装置は、固定ポート式の治療室が1室と回転ガントリー式の治療室が2室で構成される。先進的な高速スキャニング照射技術と超伝導電磁石を採用した小型の回転ガントリーが備わっており、治療開始は2031年頃の予定だ。

重粒子線治療は、炭素イオンを光速の約70%まで加速して「重粒子線」とし、がん細胞に対して高精度で照射する先進的な放射線治療法。​重粒子線は体内で広がりにくく、がん細胞にピンポイントで集中させることが出来る。正常組織への影響を最小限に抑えつつ、効率的にがん細胞を破壊することが可能で、治療回数の削減にも寄与する。​東芝ESSでは、量子科学技術研究開発機構(QST)とともに重粒子線治療装置を開発し、2016年にはQST放射線医学研究所(千葉市)の新治療棟に、世界で初めて超伝導電磁石を採用することで小型化・軽量化に成功した重粒子線回転ガントリーを納入した。

東芝ESSはこれまでに韓国で、延世大学医療院(2018年受注) とソウル大学病院(2020年受注) に重粒子線治療装置を供給しており、今回のアサンメディカルセンターからの受注は3例目となる。アサンメディカルセンターは、アサン財団が1989年にソウルに設立。総床数2432床を有する韓国最大級の医療機関で、国内外から年間約2万人の患者を受け入れている。 ​

東芝ESSは今後、重粒子線治療装置の普及を目指して、国内外での積極的な受注活動を展開し、質の高いがん治療の実現に貢献していくとしている。

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