【第58回原産年次大会】学生へのメッセージ「若い世代が国際的な視野を」
09 Apr 2025
大会2日目に開催されたFireside Chatでは、「学生へのメッセージ」をテーマに、国際的に活躍する若手エンジニアが原子力業界で培った経験やその魅力を語り合った。登壇したのは、北米原子力若手連絡会(NAYGN)アンバサダーのオサマ・ベイク氏と、東京科学大学准教授の中瀬正彦氏。
オサマ氏はカナダ唯一の原子力工学専攻(オンタリオ工科大学)を卒業後、CANDU炉改修プロジェクトや廃止措置計画、ビジネス開発、戦略立案など、幅広い分野で実務経験を積んだ。さらにIAEA(国際原子力機関)での業務にも携わり、グローバルな視野とコミュニケーション能力を養ったという。また、自身が運営するYouTubeチャンネルを通じて、原子力施設を訪問した映像コンテンツを発信し、業界内外の教育・啓発活動に大きく貢献している。
一方、中瀬准教授は学生時代からエネルギーやロボティクスに関心を持ち、化学工学や核燃料サイクル、さらには福島第一原子力発電所事故後の廃棄物処分など、多岐にわたる研究を経験。海外留学や国際的な研究活動を通じて、分野横断的な視点を身につけた。自身の経験から、「原子力は分野横断的で、多面的な研究や実務を経験できる魅力的な領域」と強調した。
また両氏は、原子力業界の魅力と可能性について次のように述べた。オサマ氏は、原子力業界が多様な専門分野を融合した領域であり、技術的・科学的知識に加えてビジネス視点や戦略的な思考、コミュニケーション能力が求められることを指摘。若い世代が新たなテクノロジーやイノベーティブなビジネスモデルを持ち込み、業界全体を活性化させる可能性があることを強調した。中瀬准教授も、原子力分野の分野横断的な性質を挙げ、多様な専門分野が交差することで、新しい研究やプロジェクトが生まれる可能性が大きいことを紹介。特に、内向きになりがちな日本の原子力業界にあって、国際的な視野を持つことが新しいアイデアやイノベーションをもたらすカギになると述べ、若い世代がこの魅力を感じ取り、積極的に参画してほしいと呼びかけた。
両氏は学生たちに、情報発信の重要性についても強調。オサマ氏は、これまで原子力業界が伝統的に保守的だったことから、原子力に関するわかりやすく親しみやすい情報が不足していたと指摘。自身の動画制作活動が業界内の教育や研修教材として幅広く活用されるようになったことで、一般社会への原子力理解が促進されている事例を紹介した。
中瀬准教授は、研究者や専門家が自らの研究成果を社会に分かりやすく伝えることで、原子力に関する社会的理解を深めることができると語った。さらに、このような活動は研究者自身のモチベーションを向上させ、社会との繋がりを強化する効果もあると強調し、積極的なコミュニケーションの重要性を訴えた。
最後に学生への具体的なアドバイスとして、オサマ氏は「この年次大会の場のように、学生時代に積極的に業界のプロフェッショナルたちと交流し、好奇心を持ち続け、自分の限界を超えて挑戦し続けてほしい」とエールを送った。中瀬准教授は、「なぜその研究や仕事を行うのか、その意義を常に意識するとともに、日本に閉じこもらず、国際的な視野をもって多様な経験を積んでほしい」と語りかけた。