原子力産業新聞

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学術会議が安全と安心の関係をテーマにシンポ

29 May 2020

ZOOM会議で「人工知能と社会」と題し講演を行う甘利氏

日本学術会議は5月28日、「安心感等検討シンポジウム」を開催。同会議の工学システムに関する委員会が主催するもので、安全と安心の関係に焦点を当て、市民の安心の実現に向けた課題・対応について議論した。

シンポジウムでは冒頭、2019年度に文化勲章を受章した数理工学者の甘利俊一氏(東京大学名誉教授/理化学研究所名誉研究員)が特別講演を行い、趣味の囲碁の話も交えながら自身の取り組んできた研究について紹介。今回のシンポジウムは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインでの開催となり、チャット機能を通じた参加者との質疑応答では、人工知能が人間を超える「シンギュラリティ」に関する質問もあった。

学術会議では毎年7月に多分野の学協会共催のもと「安全工学シンポジウム」を開催しているが、昨夏に「リスク共生社会の構築」を主張した野口和彦氏(横浜国立大学都市科学部教授)は、今回も「安心な社会の構築には、社会目的や他のリスクとの関係も含めて考える必要がある」と述べ、「社会総合リスク」を整理し、行政、企業、学界、市民の役割を改めて考えるべきと、議論に先鞭を付けた。続いて、モノづくりの視点から向殿政男氏(明治大学教授)が、安全目標と安心感の関係について松岡猛氏(宇都宮大学基盤教育センター非常勤講師)が講演。

パネル討論に入りまず、電気学会から中川聡子氏(東京都市大学名誉教授)が発表。同氏は、2018年の北海道胆振東部地震による道内全域停電の教訓から、「事は起こるもの」としてのレジリエンスの視点で、4つの「R」、Robustness(頑強性)、Redundancy(多重化)、Rapidity(早期対応)、Resourcefulness(人材・投資の活用)の重要性を強調。「生活の安心感はインフラの確保」と述べ、道内に店舗展開するコンビニが、自動車からの給電によるレジ機能確保、ガス釜炊飯、重油の備蓄などにより、発災時にも95%が営業し市民生活を支えた好事例を紹介した。

原子力安全研究協会会長の矢川元基氏は、タラゴナの考古遺産群として現存するローマ時代の水道橋のアーチ構造を図示し、「原理が自然で、フェールセーフ、ローテクだと、理解度・納得度が高く安心感が得られる」とした上で、小型モジュール炉(SMR)の自然循環による受動的安全システムをその一例としてあげた。さらに、「目で確かめられない」と人々の理解度・納得度は低くなるとして、放射線、溶接接合、新型コロナウイルスなどを例示。

また、感性工学の立場から中央大学理工学部教授の庄司裕子氏は、安全・安心の問題と、親子間のギャップの類似性を述べた上で、「まず受け手の心を知ることで、信頼関係が回復し伝えたいことが伝わる」などと主張した。

前半の講演では、辻佳子氏(東京大学環境安全研究センター教授)が、「課題解決のできる人材育成、社会実装」を図る実効的な安全教育の必要性を強調し、この他、発表者からはイノベーション、安全の定義、技術者への信頼、説明責任、マスコミの役割といった言葉があがった。これを受け参加者を交えた討論では、今後の教育のあり方や、「想定外」といった言葉の理解を巡り意見が交わされた。

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