原子力産業新聞

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学術会議が理工学分野のジェンダーバランスで報告書

08 Jun 2020

日本学術会議は6月5日、理工学分野におけるジェンダーバランスの現状と課題に関する報告書を発表した。

日本の学術界、特に理工学分野における「ダイバーシティ(多様性)の不足」を重要な問題ととらえ、理工学各分野の女性研究者が、修士、博士、助教、講師、準教授、教授と、キャリアアップするつれて減少していくいわゆる「リーキーパイプライン」を分析し、課題解決に向け教育・社会・家庭が取り組むべきアプローチについて述べたもの。男女共同参画白書によると、研究者に占める女性の割合(2017年度)は、理学14.2%、工学10.6%で、他分野と比較して極めて低い。また、大学・大学院学生で、女性の占める割合は、研究者の1.5~2倍となっていることなどから、今回の報告書では「女性が研究職として継続しにくい状況」があると指摘している。例えば、助手と教授のそれぞれで女性の占める割合は、理学で53.8%、5.2%、工学で22.5%、3.6%、農学で81.2%、4.7%などと、キャリアアップにつれ大きく後退。保健が58.2%、23.2%、家政が87.8%、34.1%であるのと比較し、「リーキーパイプライン」現象が極めて顕著となっている。

報告書では、その改善に向けた高等教育における取組として、芝浦工業大学の事例を紹介。同学では、「ダイバーシティ推進先進校」を掲げ、女性職員管理職・教員・学生比率を30%に引き上げることを目標に、出産・育児・介護を支援する学内諸制度の整備、全学共通科目「ダイバーシティ入門」の開講などを実施した結果、女性教員比率が2013年度9%から2019年度18%へと倍増した。

また、女子学生の進路選択に関し介在する「理工学系の職業は危険、体力的に困難」といった「無意識の偏見」(アンコンシャスバイアス)についても考え直す必要があるとして、新しい社会的風潮や流れを作り出していくよう、マスメディアの果たすべき役割は大きいなどと述べている。

総務省の統計(2015年)によると、女性研究者の比率は、航空(2.9%)、機械・船舶(5.2%)、電気・通信(6.9%)、物理(7.8%)、原子力(8.6%)、材料(9.2%)などの分野で低くなっている。こうした状況をとらえ、産学官の連携による「原子力人材育成ネットワーク」では2月の年次報告会で、ジェンダーバランスをテーマとして海外の取組事例に関する発表、意見交換を行った。

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