名古屋大他、浜岡1号機を活用しコンクリートの強度増大で研究成果
17 Nov 2020
名古屋大学、中部電力、鹿島建設による共同研究チームはこのほど、放射線と熱により原子炉建屋コンクリートの強度が増すことを裏付ける研究成果を発表した。現在廃止措置が進められている浜岡原子力発電所1号機(1976年運転開始、2009年運転終了)を利用し得られた成果で、11月5日に科学雑誌「Materials & Design」オンライン版に掲載されたもの。〈名古屋大発表資料は こちら〉
名古屋大学では、2015年より中部電力の自主的安全性向上の取組として原子力発電所のコンクリート部材に関する研究を推進。浜岡1号機原子炉建屋の様々な環境条件にあるコンクリート部材から円筒状に試料採取を行い、圧縮強度、コンクリート内に存在する水、微細構造、鉱物組成などを分析・調査した。その結果、原子炉格納容器から離れた一般部のコンクリート壁(厚さ1.5m)では内部が外側部分より1.5倍程度、生体遮蔽壁のように高温や放射線にさらされた部材では内部が外側部分より2倍程度の高い強度となっていた。
詳細な分析により、こうした強度増大はコンクリート中の水分分布と関係していることが示され、電子顕微鏡を用いた微細構造観察から、セメントの水和反応で生じる水酸化カルシウムが、コンクリート中の砂に存在する鉱物(アルカリ長石類)と反応し、「カルシウムアルミノシリケート水和物」と呼ばれる物質が生成されていることがわかった。さらに、発電所稼働中に比較的高温にさらされる生体遮蔽壁やペデスタル(原子炉圧力容器下部)について分析したところ、岩石鉱物の一種「トバモライト」が生成され、化学的安定性、強度が増大することを解明。
共同研究チームでは、今回の研究で確認された反応について、「ローマ時代に作られたコンクリートが現在も強度を増進し続けるメカニズムと同一のもの」として、原子力発電所の安全性向上だけでなく、耐久性に優れたコンクリートの開発やコンクリート構造物の長期利用にも貢献するものと期待を寄せている。