FNCA大臣級会合、IAEA事務局長が講演
11 Dec 2020
FNCA大臣級会合の日本側関係者(都内ホテルにて)
原子力平和利用の国際協力枠組「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の大臣級会合が12月10日、オンライン形式で行われた。
FNCAでは、オーストラリア、バングラデシュ、中国、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムの12か国の参加により、放射線利用を中心としたプロジェクト活動が実施されている。
今回の大臣級会合には、日本から、井上信治内閣府科学技術政策担当大臣、岡芳明原子力委員長、和田智明FNCA日本コーディネーターらが出席。開会に際し挨拶に立った井上大臣は、「農業、医療、工業、環境の各分野での利用が目覚ましく拡大し、アジアの持続的開発に貢献している」と、FNCAによるプロジェクト活動の成果を評価した上で、将来に向け原子力科学技術の恩恵が幅広く共有されていくことを期待した。
FNCAは発足から20年来、IAEAアジア原子力地域協力協定(RCA)による活動との相乗効果の強化に努めてきたが、今回の大臣級会合では、IAEAよりラファエロ・マリアーノ・グロッシー事務局長がオンラインにて講演を行った。同氏はまず、「アジア地域の原子力活動は非常にダイナミズムに満ちている」と、FNCA活動の将来性に期待。一方、「2020年は世界がこれまでに最も大きな課題に直面した年だった」と、新型コロナウイルス感染症拡大による影響に見舞われた1年を振り返り、6月に提唱した「ZODIAC」(Zoonotic Disease Integrated Action、動物由来の感染症対策強化に向けた包括的フレームワーク)を紹介。「ZODIAC」は、IAEAがこれまで実施してきた原子力技術を活用したPCR検査、獣医学診断ネットワークなどの個別プロジェクトの統合化により、国際的な感染症対策の強化を図るもので、日本も100万ユーロの支援を行っている。「SARS、ジカ熱、エボラ出血熱など、パンデミックは概ね1年半ごとに発生している」と、グロッシー事務局長は述べ、蓄積された経験を活かすとともに、加盟各国がリソースを提供し合い、次のパンデミックに備えておく必要性を強調した。
各参加国からの概況報告、意見交換を受け、大臣級会合は、(1)FNCAとIAEAのさらなる連携、(2)停滞を余儀なくされているプロジェクト活動の正常化に向けた努力、(3)ZODIACプロジェクトへの協力、(4)ウェブシンポジウムなどを活用した研究・技術人材交流の強化――を盛り込んだ共同コミュニケを採択し閉会した。