原子力産業新聞

国内NEWS

「ATENAフォーラム2021」がオンライン開催

19 Feb 2021

「原子力エネルギー協会」(ATENA)がこれまでの活動状況を報告し、原子力産業界の関係者が取り組むべき課題を共有する「ATENAフォーラム2021」が2月18日、オンラインにて開催された。

門上ATENA理事長

ATENAは2018年7月に電力会社他、メーカーなども含めた原子力の安全性向上に向けた産業界を挙げての組織として発足し、(1)事業者に対する効果的な安全対策の導入促進、(2)産業界の代表者としての規制当局との対話、(3)安全性向上の取組に関する社会とのコミュニケーション――の役割を担っている。門上英ATENA理事長の活動報告によると、福島第一原子力発電所事故後の事業者の取組状況を踏まえ、現在、サイバーセキュリティ対策など、19の共通技術課題を抽出し検討が行われている。原子力発電プラントの40年超運転の関連では、原子力規制委員会との技術的意見交換も踏まえ、安全な長期運転に向けて、(1)長期停止期間中の保全、(2)設計の経年化評価、(3)製造中止品の管理――に係るガイドラインが9月に策定された。

山中原子力規制委員

フォーラムに来賓挨拶として訪れた原子力規制委員会の山中伸介委員は、「安全性の向上には規制側と被規制側の双方による対話が必要」と述べ、経営層に限らず様々な階層での信頼関係をベースとしたコミュニケーションの重要性を強調。今後のATENAの活動に向けては、「グッドプラクティスを事業者全体で共有できる機能」、「安全を担う人材育成」に期待を寄せた。

コーズニックNEI理事長

また、海外から、マリア・コーズニック米国原子力エネルギー協会(NEI)理事長、リチャード・A・メザーブ電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC、2014年に設立された日本の組織)顧問、ジョージ・アポストラキス同所長、ウィリアム・E・ウェブスター・ジュニア原子力安全推進協会(JANSI)会長が、ビデオメッセージにて講演。

コーズニック氏は、気候変動問題に直面する世界情勢を踏まえ、「クリーンエネルギーの礎を築かねばならない。原子力はどんなときも一刻も動きを止めない安定したカーボンフリーのエネルギー源」と、原子力の役割を強調。さらに、「世界では原子力利用の機運が高まっている」と展望を述べ、ATENAとともに「クリーンエネルギーの未来」の創造に向け努力していく考えを示した。

メザーブ氏は、福島第一原子力発電所事故後の日本において、産業界と規制機関とのコミュニケーションには一定の評価を示す一方、「国民は原子力に対し未だに懐疑的だ。信頼獲得には長い時間を要する」と指摘。アポストラキス氏は、事業者による安全性向上の取組に関し、NRRCが研究開発を進める確率論的リスク評価(PRA)の国際的比肩を課題としてあげ、それぞれATENAへの協力姿勢を示した。

JANSIの会長に就任し間もなく3年となるウェブスター氏は、原子力の安全性向上に向けた枠組として、発電所を運転する事業者、国の安全規制機関に加え、産業界の支援グループをあげ、米国のNEI、原子力発電運転協会(INPO)、電力研究所(EPRI)による成功事例にも触れながら、「個々の問題に協力して取り組み、国際的コミュニティとも緊密なつながりを持つ」重要性を強調した。

パネルディスカッションの模様

フォーラムでは、遠藤典子氏(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティチュート特任教授)をモデレーターとするパネルディスカッションも行われ、加藤顕彦氏(日本電機工業会原子力政策委員会委員長)、倉田千代治氏(電気事業連合会原子力開発対策委員会委員長)、近藤寛子氏(東京大学大学院工学系研究科)、山﨑広美氏(JANSI理事長)、玉川宏一氏(ATENA理事)が登壇。ATENAの果たすべき役割の他、社会からの信頼獲得や人材育成などについても意見が交わされた。

※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。

cooperation