原子力産業新聞

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2050年カーボンニュートラルを見据え原子力小委が2年ぶりに始動

25 Feb 2021

総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会(委員長=安井至・バックキャストテクノロジー総合研究所エグゼクティブフェロー)が2月25日、およそ2年ぶりに開かれ、2050年カーボンニュートラル実現を見据えたエネルギー政策における原子力利用の方向性について検討が始まった。

同調査会の基本政策分科会では昨秋よりエネルギー基本計画の見直しに向けた検討を本格化。2050年カーボンニュートラル宣言(10月26日の菅首相所信表明演説)で、「再生可能エネルギーを最大限導入」、「安全最優先で原子力政策を進める」との方向性が示されたのを受け、同分科会では12月の会合で、原子力を巡る課題を、(1)安全性の追求、(2)立地地域との共生、(3)持続的なバックエンドシステムの確立、(4)事業性の向上、(5)人材・技術・産業基盤の維持・強化/イノベーションの推進――に整理し議論を深めていくこととした。

25日の原子力小委員会会合では、このうち、安全性の追求と立地地域との共生について、電気事業連合会原子力開発対策委員長の倉田千代治氏らより説明を聴取。倉田氏は、地域との共生に関し、電力個社で行われる地元小中学校への「出前授業」、水産業への研究支援、清掃・緑化活動、イベント開催などの他、原子力防災対策の取組事例を紹介した。その中で、原子力災害時における協力要員の派遣・資機材の貸与などについて定めた事業者間協力協定(12社締結)について、3月中にも見直しを行い、派遣要員を現在の300人から3,000人規模に拡充し、発災時の住民避難を円滑に実行できる相互支援体制を構築するとした。

安全性向上に関しては、原子力エネルギー協議会(ATENA)理事長の門上英氏も産業界挙げての取組状況を説明。2018年のATENA発足時を振り返り山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、原子力安全推進協会(JANSI)や電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)との連携効果を改めて示すよう求めた。

また、立地地域との共生に関する論点の中で、資源エネルギー庁は、発電所の運転終了後も見据えた立地地域の将来像を地域と国・事業者がともに議論する場の創設を提案。これに対し、杉本達治氏(福井県知事)は書面を通じ、「国の原子力に対する考えが漠然としていては、事業者の安全への投資意欲が失われ原子力を志す人材も集まらない。結果として立地地域の安全が脅かされかねない」と、原子力政策の方向性を危惧した上で、「より具体的な内容になるよう取り組むべき」と、議論の場の早急な設置を求める意見を出した。

この他、委員からは、新型コロナを機にサテライトオフィスを求める動きをとらえた「便利で快適な暮らしのモデルケース」となる地域振興策の提案や、2050年カーボンニュートラルの関連で、「2050年以降も見据え原子力の長い将来の姿を念頭に議論すべき」、「再生可能エネルギーの不確実性を補うため、原子力を一定比率持つことは国家の安定にとって不可欠」との声があった。また、原子力を巡る課題に関し、東日本大震災からの復興が進まぬ自治体の現状、地層処分に係る調査受入れを拒否する条例制定の動きなどから、「ネガティブな情報も整理すべき」といった意見や、昨今の不祥事に鑑み、「信頼回復ウェブサイトを設け真実をきちんと出していくべき」との声もあった。

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