「JANSI Annual Conference 2021」がオンライン開催
19 Mar 2021
開会挨拶に立つJANSI・ウェブスター会長(オンライン中継)
原子力安全推進協会(JANSI、ウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア会長)は3月17日、「JANSI Annual Conference 2021」をオンラインで開催。海外からのビデオメッセージ発表やパネルディスカッションなどが行われた。
JANSIは、福島第一原子力発電所事故の反省を踏まえ、「世界最高水準の安全性の追求」をミッションに掲げた原子力産業界による自主規制組織として2012年に発足し、(1)発電所評価(ピアレビュー)、(2)安全文化醸成支援、(3)運転経験情報の収集・分析・提示、(4)リーダーシップ研修、(5)安全向上策の評価・提言――などの活動を展開している。現在、事故の教訓が確実に事業者の活動において継続活用されることを目的とした「教訓集」の公開を準備中。
感染症拡大により2年ぶりの開催となった今回、来賓挨拶としてビデオメッセージを寄せたOECD/NEA事務局長のウィリアム・マグウッド氏は、「新型コロナのパンデミックで電力供給がいかに重要かを学んだ」とした。11日に福島第一原子力発電所事故発生から10年を迎えたのに際し、「これまで日本の原子力は多くの難題に直面した。今後もたくさんの課題が待ち受けているが、是非とも前に進んで欲しい。原子力は経済と環境の両面から将来に向けなくてはならないエネルギー」などと述べ、JANSIの今後の活動に期待を寄せた。
この他、世界原子力発電事業者協会(WANO)議長のトム・ミッチェル氏は、福島第一原子力発電所事故がもたらした信頼失墜の厳しさを改めて述べ、「積み上げてきた知識の土台の上に立ち、業界全体の改善に取り組んで欲しい」と強調。原子力規制委員会委員の山中伸介氏は、JANSIに対し、社会とのコミュニケーションの必要性などを指摘した上で、「事業者のマネジメントシステムの改善や、人材育成にもより一層取り組むことを期待する」とした。
パネルディスカッションでは、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会に参画する東京大学大学院工学系研究科教授の山口彰氏が座長を務め、これまでの自主的・継続的安全性向上の取組について、「米国からみてどう評価できるか」、「他産業からみて改善点はないか」などをポイントに議論。パネラーとして、JR西日本副社長の緒方文人氏、元米国サウス・カロライナ・エレクトリック&ガス社(SCE&G)副社長のジェフリー・アーチー氏、北海道電力社長の藤井裕氏、九州電力社長の池辺和弘氏らが登壇し発言した。
緒方氏は、2005年の福知山線脱線事故を踏まえた「能動的な事故防止」の取組について紹介した上で、「事故当時の社員が少なくなっている」として、事故の教訓を後進につないでいく重要性を強調。アーチー氏は、「米国では継続的改善の文化が強く浸透している」として、JANSIが設立に際し手本とした米国原子力運転協会(INPO)による原則文書「トップであり続ける」(Staying on Top)を示し、JANSIのミッション追求に向け事業者のリーダーは全面的に参画する必要があるとした。
地域への電力安定供給に係る立場から、藤井氏は、2018年の北海道胆振東部地震に伴う大規模停電や、積雪・厳寒対策を踏まえた安全性向上活動について述べた上で、泊発電所の停止期間の長期化に鑑み「技術継承やモチベーションの維持が重要な課題」と強調。また、社会とのコミュニケーションに関し、池辺氏は、発電所周辺の「フェイス・トゥ・フェイス」を基本とした取組に一定の評価を示しつつも、「九州全体、日本全体をみるとまだ不十分」として、プラントの安定的な運転とともに、原子力に対する理解促進にJANSIと連携し取り組んでいく考えを述べた。