JANSIが福島第一原子力発電所事故の教訓集を公開
01 Apr 2021
教訓集が柱に据えた政府事故調が示す7つの「知見」
原子力安全推進協会(JANSI)は4月1日、福島第一原子力発電所事故に係る教訓集をホームページ上に公開した。
JANSIは、事故の反省に立ち、原子力安全を牽引する産業界の「自主規制組織」として2012年に発足。「世界最高水準の安全性の追求」をミッションに掲げ、発電所の評価活動(ピアレビュー)、運転情報の収集・分析、技術者養成などに取り組んできた。このほど公開された教訓集は、事故発生から10年の節目に際し、これまでに発表されてきた事故調査報告書などが示す教訓を改めて再整理するとともに、教訓の元となった事象や事実をさかのぼる検索システム(準備中)を構築し、「事業者が事故の教訓を日常的に学び現場で活用できる」よう作成したもの。
教訓集は、政府事故調査委員会が最終報告書で示した委員長所感7項目を「知見」として活用し、(1)原子力施設の運営に係る教訓を再整理する際の基軸、(2)各事故調査報告書の教訓や指摘事項の体系的な整理、(3)原子力産業界だけでなく他産業界にも通じる教訓――といった「汎用的」な効果に結び付くことを期待している。政府事故調による7項目に加え、緊急時に活動する要員の環境整備や対外対応に関する「その他」項目を合わせた8つの「知見」を柱に、計71の「教訓細目」を示し、その根拠となる175の関連資料を分類整理。
「知見」の第一にあげられた「あり得ることは起こる。あり得ないと思うことも起こる」からは、8つの「教訓細目」を示している。その一つ「他社事例から脅威となる本質を見抜き、ここでも起こり得るとの現実感をもって分析する」では、福島第一原子力発電所事故の要因となった津波による全電源喪失の経験から、「来ない」、「発生しない」といった思い込みを戒め、問いかけ学ぶ姿勢を堅持し他者の意見に耳を傾ける重要性を強調。
また、「自分の目で見て自分の頭で考え、判断・行動することが重要であることを認識し、そのような能力をかん養すること」との「知見」では、「極限状態の中での意思決定に資する訓練を行う」必要性を述べており、各種事故報告書が記述した事故発生当時の現場での指揮状況について拾い上げ、冷静な決断力と信頼される人間力が極限状態の判断者には求められるとしている。
この他、複合災害に鑑み緊急時要員の長期的な安全・健康管理や、情報発信に関し日頃からのリスクコミュニケーションを通じ「伝わること」を目指す重要性なども述べている。