農水省、福島産品の2020年度流通実態調査結果を発表
02 Apr 2021
今回の流通実態調査では青果市場の仲卸業者に社会実験を実施、2種類のチラシを配布し行動を比較(右が「ナッジ」利用、農水省発表資料より引用)
農林水産省は3月31日、福島県産農水産物の流通に係る2020年度の実態調査結果を発表した。福島県の農林水産業の再生に向けて、県産品の市場における販売不振の実態と要因を明らかにするため2017年度より行われているもの。
それによると、調査対象の25品目中、重点6品目とする米、牛肉、桃、あんぽ柿、ピーマン、ヒラメについて、出荷量は依然と震災前の水準までに回復しておらず、価格は全国平均と比較し差が徐々に縮小し、ピーマンとヒラメではほぼ全国水準に達しているものの、他の品目では下回っているといった実態が明らかとなり、「引き続き販売不振の解消に向けた取組が必要」としている。
同調査で実施した全国消費者約1万人へのアンケートによると、県産米では20.9%、県産桃では23.6%が購買したと回答しているほか、6品目ともに7~8割が「非常によい」、「よい」と評価。なお、桃の出荷量は、台風に伴う大雨や病害の影響で前年度より約2割減少している。
全国平均との価格差が生じる背景については、事業者へのヒアリングでマーケティング面の課題も数多く指摘されており、消費者の需要の変化に応じた対応とともに、ブランド力や商品開発力の強化も求められているなどと分析。
一方で、納入業者(仲卸業者など)が納入先(加工業者、小売・外食店など)の福島県産品の取扱い姿勢を過剰にネガティブに評価している、という「認識のそご」があることから、今回の調査では、人の感情に働きかけて“何となく”行動を促す「ナッジ」(nudge:「そっと後押しする」の意)と呼ばれる手法を用いた実証試験を実施。東京・大田市場内の青果仲卸業者125社を2グループに分け、一方には「認識のそご」を単に説明したチラシを、他方には「ナッジ」を利用して納入先への提案を促すチラシを配布し、納入先の福島県産品の取扱い姿勢について確認してもらうよう依頼した上で、両グループの行動・意識の変化を比較した。つまり、Aグループには「取引先はあなたが思っているほど福島県産品であることを気にしていない」と端的に説明するのに対し、「ナッジ」を利用するBグループには「納品先に自分から福島県産品を提案する方が多くなっている」と、「同調行動」を促すという仕掛け。その結果、Bグループの方が「販売先への福島県産品の提案を増やそうと思った」割合が6.9ポイント高くなっていた。さらに、「チラシ形式の通知を受け取ったことにより、福島県産品の扱いについて考えるきっかけとなった」とする事業者も前年度調査と比べ増えており、情報発信において、「ナッジ」を活用したチラシ発出の重要性が示されたとしている。