春の叙勲、元IEA事務局長・田中伸男氏らが瑞宝重光章
30 Apr 2021
政府は4月29日、春の叙勲受章者を発表。原子力・エネルギー関連では、瑞宝重光章を元国際エネルギー機関(IEA)事務局長の田中伸男氏らが受章した。
田中氏は、第一次石油危機の渦中にあった1973年に通商産業省(現経済産業省)に入省。経産省の要職とともに、在米日本大使館やOECDの勤務経験も有するなど、ほぼ一貫してエネルギー国際協力の分野を歩んできた。2007年に欧州以外では初となるIEA事務局長に就任。同職退任後も、日本エネルギー経済研究所特別顧問、笹川平和財団会長を務め、シンポジウムへの登壇や提言発表を通じ、日本のエネルギー事情に関して、中東情勢の緊迫や化石燃料依存などの現状から警鐘を鳴らし、原子力技術開発の重要性を訴えている。2017年からは、安倍元首相の提唱により毎年開催されている技術イノベーションと気候変動対策について議論する国際会合「ICEF」の運営委員長を務めており、エネルギー・環境技術の分野で現在も活躍中だ。
この他、瑞宝重光章には、東京工業大学名誉教授の相澤益男氏、元文部科学審議官の白川哲久氏らが選ばれた。相澤氏は2001~07年の東工大学長在任中、21世紀COEプログラム「世界の持続的発展を支える革新的原子力」(文科省事業、2003~08年)の立ち上げなど、高等教育の立場から理工系人材の育成強化に関わり、その後も政府の総合科学技術会議有識者議員などを歴任。白川氏は2002~03年の文科省研究開発局長在任時に日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合に関し議論を進めるなど、科学技術行政で手腕を発揮した。
また、瑞宝中綬章に、東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏、明治大学名誉教授の向殿政男氏、元放射線医学総合研究所(現量子科学技術研究開発機構)理事長の米倉義晴氏、元原子力安全委員会事務局長の上原哲氏、元文科省国際統括官の瀬山賢治氏、元文科省総括審議官の干場靜夫氏らが選ばれた。
畑村氏は「失敗学」の知見を活かし福島第一原子力発電所事故に係る政府事故調査委員会をリード。向殿氏は安全工学の第一人者で2015年に安全功労者総理大臣表彰(産業部門)を受けており、アカデミアの立場から原子力安全に対しても多くの示唆を与えている。米倉氏は、放医研理事長在任中の2013年、福島第一原子力発電所事故後の放射線に対する関心の高まりに対応し、新たな研修棟を建設するなど、放射線に係る人材育成・普及啓発に尽力。上原氏は、原子力安全委員会事務局長在任中の2004年に関西電力美浜3号機事故が発生し、事故の原因調査などに対応した。瀬山氏は2000年に始動した「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の立ち上げで、干場氏は科学技術行政の経験を活かし東京大学を拠点とするグローバルCOEプログラム「世界を先導する原子力教育研究イニシアチブ」(文科省事業、2007~11年度)の広報活動などでそれぞれ手腕を発揮した。