原子力産業新聞

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原子力機構、福島第一廃炉現場の汚染分布を3次元で“見える化”する新システムを開発

17 May 2021

実証試験を行った福島第一1/2号機排気筒(原子力機構発表資料より引用)

日本原子力研究開発機構は5月14日、福島第一原子力発電所廃炉現場の汚染箇所や空間線量率を可視化した3次元マップを描画するシステムを開発したと発表。1/2号機排気筒下部付近に同システムを適用し有効性を確認した。〈原子力機構発表資料は こちら

福島第一原子力発電所の1/2号機排気筒(元の高さ120m)は高線量とともに破断箇所があったため、今後の廃炉作業におけるリスク低減に向け、地元企業の協力も得て高さを半分にする解体工事が遠隔操作で行われ、2020年4月に作業を完了している。原子力機構では昨秋、現地で同システムの実証試験を行い、高線量のエリアに進入することなく5分未満の歩行測定で汚染分布を表示した3次元マップの描画に成功。ロボットに搭載することで、作業者の入域が困難な原子炉建屋などの高線量率エリア内部の3次元汚染分布マップを容易に取得することが可能となり、作業員の被ばく線量低減や除染計画の立案に役立つことが期待できるとしている。

iRISを構成するキーデバイスと役割(原子力機構・佐藤氏発表のパワーポイントより引用)

同機構の廃炉環境国際共同研究センター(CLADS)では、これまでも重厚な遮蔽構造を不要とした放射性物質可視化カメラ「コンプトンカメラ」の改良を重ね、帰還困難区域環境中のホットスポット(局所的な汚染)を特定できるドローンシステムの開発など、遠隔放射線イメージングシステムに関する成果をあげてきた。「コンプトンカメラ」では汚染源からの距離を知ることはできないため、測域センサ「3D-LiDAR」で3次元的な地形モデルを取得する。今回開発されたシステムは、「コンプトンカメラ」と「3D-LiDAR」に、歩行ルート上の線量率データを取得するサーベイメーターを組み合わせた統合型放射線イメージングシステム「iRIS」(integrated Radiation Imaging System)として完成されたもの。「コンプトンカメラ」と「3D-LiDAR」を合わせても重さ約5.5kgと持ち運びも可能だ。

iRISによる3次元マップは現場をあらゆる角度から見ることができる(原子力機構・佐藤氏発表の動画より引用

新システムの開発に当たったCLADSの佐藤優樹氏は、14日に記者会見を行い、1/2号機排気筒下部の汚染分布を仮想空間に再現し360度方向から俯瞰的に観察するデモンストレーションを披露。同氏は、およそ100mまでの測定距離に対応できる「コンプトンカメラ」の性能に自信を示しながらも、今後の実用化に向けて「遮蔽物に伴うデータ補正が課題」などとしている。

 

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