総合エネ調、今夏・今冬の電力需給対策について議論
25 May 2021
総合資源エネルギー調査会の電力・ガス基本政策小委員会(委員長=山内弘隆・武蔵野大学経営学部特任教授)は5月25日、今夏・今冬の電力需給対策について議論した。14日に梶山弘志経済産業相は、今夏および今冬の電力需給に関し、それぞれ「ここ数年で最も厳しい」、「東京エリアにおいて安定供給に必要な供給力が確保できない」との見通しから、5月中を目処に対策を取りまとめるよう指示を出している。
25日の会合で資源エネルギー庁が説明した今夏の電力需給見通しによると、8月は最大需要発生時の予備率が東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国の各エリアで3.8%(エリア間の電力融通も考慮、前年は沖縄を除き6.4~9.7%)と見込まれ、2017年度以降で最も厳しいものとなる見通し。沖縄を除く全国合計で、8月の最大需要電力16,609万kWに対し、供給力は17,847万kWと、火力発電の供給力減少(約680万kW)が大きく影響し、前年の18,206万kWを下回る見込み。昨夏に稼働した火力発電所でも、1970年代に運転開始した高経年プラントを中心に計画外停止や休廃止がなされたことで、大手電力会社だけでも約830万kW分が今夏の供給力には見込めない状況となっている。
また、今冬については、現時点で、東京エリアにおいて安定供給に必要な予備率3%を確保できる見通しがたっていない状況。こうした厳しい見通しに対し、資源エネルギー庁は、昨冬の需給ひっ迫経験も踏まえ、需給対策として、今夏については、(1)発電事業者への要請(保安管理の徹底、燃料の十分な確保など)、(2)小売電気事業者への要請、(3)ひっ迫時の対応体制整備(事業者間の連携ルールの整備、「でんき予報」の表示改善など)、(4)需要家への呼びかけ(省エネの協力要請など)――を図るとし、今冬に向けても追加的な供給力確保策を6月中を目処に決定する方向性を示した。
これを受け、東京・中部エリアに火力発電所を有するJERA(2019年に東京電力と中部電力の火力発電事業を統合)は、事業者によるLNG調達対応の限界から「国全体で安定供給に係るリスクをカバーする仕組みが必要」と切望。また、高経年プラントを巡る厳しい現状については、運転開始から50年を経過した鹿島火力発電所(石油)を例示し、「設備全体の劣化が広範囲で進行し、維持コストも年々膨らんでいる」などと説明した。
8月の最大需要発生時の供給力見通しを電源別に前年と比較すると、水力と太陽光が200~300万kWの伸びを見せている。原子力発電については、今夏の供給力は674万kWと、前年の534万kWを上回る見通し。昨夏は、九州電力川内1、2号機(PWR、各89万kW)がテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」の整備を伴う定期検査により停止していたが、今夏はそろって供給力となりそうだ。また、関西電力美浜3号機(PWR、各82.6万kW)が国内初の40年超運転として7月下旬にも本格運転に復帰する予定となっている。